展覧会「浮世絵と中国」が、東京の太田記念美術館にて、2023年1月5日(木)から1月29日(日)まで開催される。
江戸時代の日本文化は、鎖国下でもなお中国からの影響を受けていた。中国の古典文学や故事は教養として浸透しており、最新の中国文化は人びとの関心を集めていた。浮世絵の展開にもまた、中国文化の影響を見てとることができる。たとえば『三国志』や『水滸伝』の豪傑の姿が浮世絵に描かれるばかりでなく、多色摺といった技術革新も中国との交易がもたらしたものだった。
展覧会「浮世絵と中国」では、江戸期から明治期にかけての浮世絵から、中国文化の影響を示す作品を紹介。浮世絵の背後にある、中国文化との繋がりに光をあててゆく。
浮世絵師は、中国由来の画題を手がけ、パロディや創作を加えた作品も生みだした。その例が『三国志』や『水滸伝』だ。これらの物語が初めて翻訳、翻案されたのは江戸時代のことであり、浮世絵の題材にも取り上げられることになった。本展では、歌川国芳による人気シリーズ「通俗水滸伝豪傑百八人之一人」や、大画面に豪傑の活躍を描いた「通俗三国志之内」などを紹介する。
また、鈴木春信は中国画題を日本の情景に置き換えて作品化し、葛飾北斎は中国由来のあらゆる画題で作品を制作、歌川広重は漢詩を添えた花鳥画を手がけるなど、時代を代表する絵師の作品には中国文化の影響を随所に見出すことができる。会場では、それぞれの作品から中国文化摂取の変遷に触れることもできる。
中国からの影響は、画題のみならず技術面にも及ぶ。たとえば「多色摺」は、中国版画の影響のもとで成立。西洋の透視図法が中国版画を介して日本に伝わると、「浮絵」と呼ばれる景観描写が発達した。また、鮮やかな発色を特徴とする合成染料「プルシアンブルー(ベロ藍)」が幕末に多用された背景には、ドイツ生まれのこの染料を中国から安価に輸入できるという状況があった。本展では、こうした技術面にも着目しつつ、葛飾北斎《唐土名所之絵》や歌川広重《枇杷に小禽》、田村貞信《浮絵中国室内図》などを紹介する。
展覧会「浮世絵と中国」
会期:2023年1月5日(木)〜1月29日(日)
※1月18日(水)に一部展示替え
会場:太田記念美術館
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
開館時間:10:30〜17:30(入館は17:00まで)
休館日:月曜日(1月9日(月・祝)は開館)、1月10日(火)
観覧料:一般 800円、高校・大学生 600円、中学生以下 無料
【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)