企画展「『二つの栃木』の架け橋 小口一郎展 足尾鉱毒事件を描く」が、栃木県立美術館にて、2023年1月21日(土)から3月26日(日)まで開催される。
小口一郎(こぐち いちろう)は、栃木県小山市出身の版画家であり、足尾鉱毒事件を主題とした作品をライフワークとして手がけている。1914年に生まれ、幼少期より絵画に才能を示した小口は、鈴木賢二らによって結成された日本美術会の北関東支部の活動に参加し、本格的に木版画制作を開始。やがて足尾鉱毒事件と田中正造について知って衝撃を受けると、これらを広く世に伝える方法を模索し、3つの連作版画を手がけることになる。
明治期、足尾銅山の鉱毒被害に遭った旧谷中村や渡良瀬川流域の農民たちは、北海道開拓移民として佐呂間の原野に渡って「栃木集落」を形成、のちに栃木への帰郷を果たすのは1972年のことであった。小口はまず、鉱毒被害に苦しむ旧谷中村の農民たちと田中正造を題材に、連作版画「野に叫ぶ人々」を制作。続いて、厳寒の佐呂間へ移住した人びとの生活と帰郷への思いを取り上げて「鉱毒に追われて」を、最後に足尾銅山の坑夫たちの労働問題をもとに「盤圧に耐えて」を手がけた。これら3部作は、今なお小口の代表作として高く評価されている。
また、足尾銅山の鉱毒被害に遭って佐呂間に渡った農民たちが、歳月を経て郷里・栃木の土を踏んだとき、その帰郷運動の世話役を務めたのが小口であった。2022年は、「もうひとつの栃木」から帰郷して50年の節目の年にあたることになる。
企画展「『二つの栃木』の架け橋 小口一郎展 足尾鉱毒事件を描く」では、足尾鉱毒事件を主題とする作品を中心に、約300点から小口の生涯を紹介。連作版画「野に叫ぶ人々」、「鉱毒に追われて」、そして「盤圧に耐えて」の全点を初めて一堂に集めて展観するとともに、油彩画や版画作品もあわせて展示する。
企画展「『二つの栃木』の架け橋 小口一郎展 足尾鉱毒事件を描く」
会期:2023年1月21日(土)〜3月26日(日)
会場:栃木県立美術館 企画展示室
住所:栃木県宇都宮市桜4-2-7
開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般 900円(800円)、高校・大学生 600円(500円)、中学生以下 無料
※( )内は20名以上の団体料金
【問い合わせ先】
栃木県立美術館
TEL:028-621-3566