特別展「時を超えるイヴ・クラインの想像力─不確かさと非物質的なるもの」が、金沢21世紀美術館にて、2022年10月1日(土)から2023年3月5日(日)まで開催される。
特別展「時を超えるイヴ・クラインの想像力─不確かさと非物質的なるもの」は、1950〜60年代にかけて活躍した作家イヴ・クラインを中心に、イタリアの空間主義運動や日本の具体美術協会といった同時代の作家、そして現代作家による60点超の作品を通して、これらの芸術に通底する「非物質性」に光をあてる展覧会だ。
第二次世界大戦後の芸術家は、「空虚」とも形容しうる荒廃した状況から何を作りだすことができるのかを模索した。この際に起点となったのは、自らの身体、物質、あるいは空間の関係であり、イタリアの空間主義運動、ドイツなどの「ゼロ」、そして日本の具体美術協会をはじめ、実験的な芸術がさまざまに試みられた。そうしたなか、新しい人間性を探求する作家として登場し、芸術の「非物質性」を探求したのが、フランス人作家のイヴ・クラインであった。
1928年、ニースに生まれたイヴ・クラインは、深く鮮やかな青の顔料「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」を開発するなど、青の作家として知られている。19歳の時、空に非物質的な世界を見出して絵画を描くようになったクラインは、「青」に代表される色のほか、火や水、空気などを作品に用い、作品の素材や支持体のみに依存しない「非物質的」な芸術を追求した。
また、ニースで柔道を習っていたクラインは、1952〜53年にかけて日本に滞在して黒帯を取得し、精神と身体の関係性も探求。その後、1958年にはギャラリーに何も展示されていない展覧会、通称「空虚」展で物議を醸すなど、1962年に亡くなるまでの短い人生のなかで、芸術に対する大胆な試みを展開したのだった。
イヴ・クラインを中心に構成された展覧会としては日本で37年ぶりとなる本展では、クラインの表現活動の核となる色、火、空気、そして音などの「非物質的」な要素をキーワードに、同時代や現代の作品をあわせて紹介。たとえば「身体とアクション」では、IKBを塗布した生身のモデルをカンヴァス上にかたどったクラインの代表作「人体測定」シリーズとともに、具体の作家・白髪一雄が自らの身体で描いた絵画を展示する。一方、「色と空間 」では、色彩を感性的な空間として捉えるクラインの考え方に着目しつつ、モノクロームの絵画面を切り裂いたルーチョ・フォンタナの「空間概念」などを紹介する。
本展の大きな特徴のひとつが、クラインの制作活動に多くの着想を与えた日本との繋がりに光をあてる点だ。代表作の「人体測定」シリーズは、日本に滞在した際にクラインが深く知ることになった広島の原爆の影響を受けている一方、空中浮遊のパフォーマンス《空虚への飛翔》は、柔道によって培われた身体感覚に基づいているとされる。また、モノクローム絵画の着想源のひとつには、日本で目にした金屏風や漆器があるともいわれる。会場では、柔道との関わりや金箔を用いたモノクローム絵画などに着目しつつ、日本に見るクラインの芸術の源泉を探ってゆく。
クラインが実践した芸術における非物質性の追求は、現代にも繋がるものだ。本展では、現代の作家による非物質性の探求に光をあて、布施琳太郎やハルーン・ミルザ、トマス・サラセーノ、キムスージャの4人を紹介。なかでも、iPhone登場以降の都市における「新しい孤独」を題材とした絵画や映像を制作する布施と、音や光、電流を用いたインスタレーションで知られるミルザは、本展のためにサイトスペシフィックな新作を発表する。
特別展「時を超えるイヴ・クラインの想像力─不確かさと非物質的なるもの」
会期:2022年10月1日(土)〜2023年3月5日(日)
会場:金沢21世紀美術館 展示室5〜12・14、光庭2
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
開館時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:月曜日(10月10日(月・祝)・31日(月)、1月2日(月・振替休日)・9日(月・祝)は開場)、10月11日(火)、11月1日(火)、12月29日(木)〜1月1日(日)、1月4日(水)・10日(火)
観覧料:一般 1,400円(1,100円)、大学生 1,000円(800円)、小中高生 500円、(400円)65歳以上 1,100円
※( )内は、20名以上の団体料金およびウェブチケット料金
※ウェブ販売チケットは、2022年9月1日(木)10:00より、美術館ウェブサイトにて購入可
※入場当日に限り、「コレクション展1 うつわ」(対象期間:10月1日(土)〜10月16日(日))および「コレクション展2 Sea Lane(航路) ─ 島々への接続」(対象期間:11月3日(木・祝)〜3月5日(日))にも入場可
■出品作家
イヴ・クライン、今井祝雄、エンリコ・カステラーニ、金山明、キムスージャ、草間彌生、トマス・サラセーノ、白髪一雄、白髪富士子、ルーチョ・フォンタナ、アルベルト・ブッリ、布施琳太郎、ピエロ・マンゾーニ、ハルーン・ミルザ、元永定正、ギュンター・ユッカー ほか
【問い合わせ先】
金沢21世紀美術館
TEL:076-220-2800 (代表)