産業革命、続く大英帝国の拡張と消費主義の出現に特徴付けられるこの時代には、君主や政治家に対する風刺画も流行を見せた。芸術に対する豊かな支援活動を行なった君主として知られたジョージ4世は、優雅な横顔をもつ肖像画に描かれる一方、皇太子時代には虚栄と放蕩で悪名高かった巨漢の姿を風刺する版画も描かれている。
ハノーヴァー朝の君主として63年の長きにわたって君臨したのが、ヴィクトリア女王である。その統治のもと、大英帝国はカナダやオーストラリアのみならず、インドやマレー半島、そしてアフリカ西部の植民地支配に成功し、世界の大国となったのだった。
この時代、君主は強大な政治的権力を示すというよりも、名目上の国の代表者としての役割を担っていた。そのためヴィクトリア女王の肖像画には、女王としての姿と貞淑な女性という相反するイメージを表現することが試みられた。会場には、長い在位を終えた女王を描いた肖像画のほか、調和のとれた家庭生活を伝える版画、広く人びとの間に流通した写真なども紹介している。
第一次世界大戦中、ジョージ5世が王室の公式名を改名して生まれたのが、ウィンザー朝である。2度の世界大戦、そして技術や社会的道徳観の大きな変化といった激動の時代を切り抜け、この王朝は現在にまで続いている。
1952年に25歳で即位したエリザベス2世は、セレブを思わせる姿、長い伝統を有する王室の務めを果たす姿、そして理想的な母としての姿など、現代を生きる君主を体現する多彩なイメージが付与されている。イブニングガウンと王冠を身に付けた鮮やかな肖像はその代表的な例であり、白黒の写真に着彩することでいきいきとした姿で表現されている。
そしてエリザベス2世の子孫も、王室のセレブとして世界中から注目を集める。会場では、チャールズ皇太子とダイアナの結婚を記念して制作された肖像画《ダイアナ妃》や写真など、現代の王室を見つめる表現の数々を展示する。
展覧会ナビゲーターは、美術書『怖い絵』シリーズの著者である中野京子が務める。中野京子の著書『名画で読み解く イギリス王家 12の物語』を展覧会公式参考図書とし、様々なコラボレーションを展開予定だ。
ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵
KING&QUEEN展 ―名画で読み解く 英国王室物語―
会期:2020年10月10日(土)~2021年1月11日(月・祝) ※会期中無休
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
料金:平日 一般 1,800円、高校・大学生 1,600円、小学・中学生 1,000円
土日祝 一般 2,000円、高校・大学生 1,800円、小学・中学生 1,200円
※未就学児無料
※日時指定制を導入
※入場・チケット購入方法ほか公式ホームページを確認。
チケット発売日:一般チケット 8月29日(土)<予定>、一部企画チケット 8月22日(土)<予定>
【問い合わせ先】
TEL:03-5777-8600(全日 8:00~22:00) ハローダイヤル