企画展「モダン美人誕生-岡田三郎助と近代のよそおい」が、2018年12月8日(土)から2019年3月17日(日)まで、箱根・ポーラ美術館にて開催。人気コミック『はいからさんが通る』とのコラボレーションも実施される。
美意識やファッションに、大きな変化がもたらされた、明治から昭和初期にかけての時代。開国後は、和装が姿を消し西洋式のスタイルが取り入れられるようになり、大正期には、女性の社会進出や大戦後の好景気にともなってモダンで華やかなファッションが広がりを見せた。
「モダン美人誕生-岡田三郎助と近代のよそおい」では、近代における“美人”のイメージの創出に大きな役割を担った洋画家・岡田三郎助を中心に、“美”の概念が変化していった時代背景と、ファッションや化粧道具の変遷を辿る。
現代にも通じる「モダン美人」の原点を、岡田三郎助をはじめ、藤島武二、村山槐多などの絵画や、化粧道具類、着物、ジュエリー、ポスター・雑誌・写真など、約200点の資料とともに紹介する。
開国後の明治期の化粧や服装は、江戸時代の慣習を残しながらも徐々に西洋化しているのが見て取れる。昭憲皇太后をはじめとする皇族や華族の女性が率先して洋装を取り入れ、お歯黒や眉剃り、眉作りといった風習をいち早く取りやめている。そのため、お歯黒などの伝統的な化粧道具は姿を消すことになり、「あやめ文銀製化粧セット」に見られるような、洋装のためのマニキュアセットなどが登場することになる。
当時の浮世絵には、バッスルスタイルのドレスをまとった女性や、洋装化に合わせた様々な髪形が描かれている。
岡田三郎助は、大きくてうるんだ瞳に、ふっくらした唇と、江戸時代とは異なる新たな美人像を創出した洋画家の一人。日本初の美人写真コンテストの審査員を務め、その告知宣伝のための作品《ダイヤモンドの女》などを手掛けた。岡田三郎助の描く「美人」は婦人雑誌の表紙などを通じて世の中に広く発信された。
当時、岡田三郎助などの画家は百貨店業界や雑誌の出版業界と関わりを持ち、タッグを組んで流行を作り出していた。明治末期から近代的百貨店化を進めた三越呉服店のポスターとなった、《婦人像》は象徴的な作品だ。また、岡田三郎助は絵だけでなくファッションにも優れた感性を持ち、自ら蒐集した着物をモデルに着せ、女性をより美しく演出した作品《あやめの衣》なども残している。
大正から昭和初期にかけては女性の洋装化が進み、「モダンガール」が登場する。また、完全な洋装でなくても、洋風のアクセサリーやモダンな髪形、西洋から影響を受けた柄の着物などが世に出回った。
また、自由な気風の大正時代には、1つの価値観にとらわれない多様な女性像が誕生した。画家の独特な感性や、モデル自身の個性を反映し、個々の主張を強く語りかけるような、表現が散見される。例えば、藤島武二はチャイナドレスをモデルに着せることで東洋的な表現を追求。作品からは、藤島武二の独創的な表現意欲だけではなく、中国大陸への進出を目論んでいた当時の日本の社会情勢も、読み取ることができる。