特別展「木島櫻谷 ─山水夢中─」が、京都の泉屋博古館にて、2022年11月3日(木・祝)から12月18日(日)まで開催される。その後、2023年6月3日(土)から7月23日(日)まで、泉屋博古館東京に巡回する。
木島櫻谷(このしま おうこく)は、近代京都画壇を代表する存在として、近年再評価が進んでいる日本画家だ。京都の伝統を継承して写実に重きを置きつつ、西洋絵画の要素をも取り入れ、近代的で洗練された作風の作品を手がけた櫻谷は、親しみやすい動物画で知られる一方、生涯にわたって山水画も描き続けた。
特別展「木島櫻谷 ─山水夢中─」は、木島櫻谷の山水画に着目した展覧会。屏風などの大作から掛物に至る多彩な山水画に加えて、青年期の写生帖なども展示し、櫻谷ならではの山水画の世界を紹介する。
写生を重んじた櫻谷は、20〜30代にかけて、飛騨や富士、若狭、大分などへ写生旅行に出かけた。数十冊にのぼる旅先の写生帖には、山川海野の風景から人びとの姿まで、櫻谷が心惹かれた対象が高い写生技術で描きとめられている。会場では、櫻谷の新鮮な感動を閉じ込めた珠玉の写生帖を一挙に公開する。
櫻谷は20代から、写生を踏まえた景観表現を作品に取り入れていった。その山水画においては、自然や人物といったモチーフは実在感を湛え、光と影の表現が見られるばかりでなく、西洋絵画の空間意識も反映されている。ただし、櫻谷にとって写生とは、徹底して事物と向き合い、その本質を掴みとるための行為であった。そして、それを自らの内で醸成させ、やがて立ちあがってくる姿を作品として描きだしたのだという。本展では、山水画の集大成といえる幅11mの大屏風《万壑烟霧(ばんがくえんむ)》などを展示するとともに、南陽院を館外会場に、櫻谷による山水障壁画も全室初公開する。
写生から育まれた櫻谷の山水画は、やがて本質を抽出したようなシンプルな表現へと到達するようになる。写実的表現と抽象化されたフォルムが溶けあうその作品世界に欠くことができなかったのが、濃厚な色彩だ。櫻谷は、岩絵具がもつ強い発色やざらついた質感、厚みを活かすことで、身近な日本の景観をこの世のものとは思えない至高の眺めへと昇華させていったのだった。会場では、《寒月》や《幽渓秋色》、《暮雲》など、表現のいっそう深まった山水画を展示する。
櫻谷は50歳前後から公職を離れ、自邸で文人的な暮らしをするようになった。そうしたなか、57歳で製作した最後の帝展出品作品《峡中の秋》は、高さ2mを超える山水画の大作であった。写生による実在感を備えつつもより大きなスケールで描かれた同作は、古来より文人が重視してきたように、墨線そのものの魅力を追求するものであった。その画風はいわば、青年期の写生と、幼少期より親しんできた漢詩や古書画の世界が一体となったものであるといえる。本展では、《峡中の秋》などから、櫻谷が晩年に到達した境地に光をあてる。
特別展「木島櫻谷 ─山水夢中─」
会期:2022年11月3日(木・祝)〜12月18日(日)
会場:泉屋博古館
住所:京都府京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24
開館時間:10:00〜17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日
入館料:一般 1,000円、高校・大学生 800円、中学生以下 無料
※20名以上は団体割引20%
※障がい者手帳の提示者本人および同伴者1名までは無料
■特別連携公開
木島櫻谷《山水障壁画》
期間:2022年11月3日(木・祝)〜11月13日(日)、11月23日(水・祝)〜12月11日(日)
場所:南陽院本堂
住所:京都市左京区南禅寺福地超
拝観休:期間中の月曜日
拝観料:1,000円(時間指定制)
※チケットはイープラスにて取り扱い、問い合わせは泉屋博古館へ
■巡回情報
・泉屋博古館東京
会期:2023年6月3日(土)〜7月23日(日)
住所:東京都港区六本木1-5-1
【問い合わせ先】
泉屋博古館
TEL:075-771-6411