注目の現代アーティストを個展形式で紹介する「アーティスト・ファイルー現代の作家たちー」展が2013年1月23日(水)から4月1日(月)まで国立新美術館で開催される。これを記念して、1月22日(火)には作家自ら作品について語るアーティスト・トークおよび報道関係者向け内覧会が行われた。
広いスペースを活かして、一人ひとりのアーティストの作品が展示される本展。この特徴を最も象徴的に表しているのが、3人の作家による大規模インスタレーションだ。東亭順(AZUMATEI Jun)の作品は、汗やよだれ、愛し合った恋人たちの体液など、かつての持ち主が過ごした時間を刻んだ中古シーツを素材に扱っている。シーツの刺繍に施した色鉛筆の彩色や、オイルやニスをにじませることで、しみという「見えない記憶」を浮かび上がらせた。その他、土を焼いて作ったブロックと丸太を積み上げ高さ8メートルにもおよぶ巨大な造形物を制作した國安孝昌(KUNIYASU Takamasa)や、生活に身近な素材を使って屋外にいるような開放感ある空間を創り出した利部志穂(KAGABU Shiho)など、いずれも作家の個性が生きたインスタレーションとなっている。
中澤英明(NAKAZAWA Hideki)の小さな絵画が並べられた部屋は、大規模な展示とは対照的だ。手間のかかるテンペラ技法で制作するため寡作とも言える中澤にとっては、約8年ぶりの新作展。今回新作30点を発表している。心まで見透かすように、まっすぐこちらを見つめる「子供の顔」シリーズについて、「何も考えずに描いているし、何か(テーマのような)言いたいことがあるわけでもありません。でも、『死』は何となく気になっていて。子供は死から1番遠い存在だけれど、生と死は表裏一体でもある。(描く対象は)子供じゃなくてもいいのかもしれないけれど、それが突き動かされる理由かも知れません」と振り返った。
左から) ヂャン・ヨンドゥ作品、志賀理江子作品
また見る者を囲いつくすように所狭しと写真が飾られた志賀理江子(SHIGA Lieko)の展示部屋では、彼女の作品がもつ、魂の奥底まで響く圧倒的な力が増幅されているようだ。東北の北釜と呼ばれる土地で2008年より暮らす志賀が受け止めた「北釜というイメージ」を全身で感じてみてほしい。
3名の海外アーティストの作品も、独特の世界観だ。子どもが描いた絵をもとに、不思議で夢のような世界を写真作品として作り上げたシリーズ「ワンダーランド」などを出品した韓国の現代作家ヂョン・ヨンドゥ(Yeondoo JUNG)や、またインド古来の神やゆがめられたグロテスクな人の体などを描いたシリンダーが、美しく幻想的な光をまとう映像作品を制作したインドを代表するアーティスト、ナリニ・マラニ(Nalini MALANI)。そしてイギリス国内外で精力的に活動するダレン・アーモンド(Darren ALOMND)は、満月の光に照らされた幻想的な写真シリーズ「Fullmoons」や、2005年のターナー賞にノミネートされた映像作品「あなたがいれば…」を展示している。
会期中には出品作家によるイベントや、アーティスト・トークが開催される。作家の詳細プロフィールと併せてスケジュールをチェックしてみよう。→「国立新美術館で「アーティスト・ファイル2013―現代の作家たち」開催」
【展覧会情報】
アーティスト・ファイル2013―現代の作家たち
会期:2013年1月23日(水)~4月1日(月)
場所: 国立新美術館 企画展示室 2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
【問い合わせ先】
国立新美術館
URL:http://www.nact.jp/