東京・三鷹の森ジブリ美術館にて、新企画展示「食べるを描く。」が開催されている。当初2018年5月までを予定していたが、期間延長となり2018年11月4日(日)まで開催予定となった。なお、入場は完全予約制。チケットは日時指定となり、毎月10日に発売される。
日常を丹念に描き、日々の営みを丁寧に表現するスタジオジブリ作品。その中でも印象的なシーンとして挙げられるのが食事のシーンではないだろうか。
企画展「食べるを描く。」では、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『天空の城ラピュタ』といったそれぞれの作品のなかで印象的な食事のシーンを取り上げる。そして、どのようにしてそのシーンが描かれているのかを、『ゲド戦記』『コクリコ坂から』などを手掛けた宮崎吾朗企画監修により、絵コンテや原画、さらには監督や作画監督が手を入れた修正原画などを用いて解説。さらに食事を作るシーンを忠実に再現した展示室も公開する。
登場する食べ物は決して特別なものではない。誰もが目にしたことのある、あるいは日常で口にするありふれたものだ。ところが、スタジオジブリ作品では、一緒に食事をすることで登場人物は心を通わせあったり、その食事から力をもらったりと、物語のなかでいつも重要な意味が込められているのだ。
その演出を可能にしているのが、描き出す作画の力。細やかな原画や絵コンテによって、映像から温かみや柔らかさを醸し出す。だからこそ、スタジオジブリ作品の食事はいつだっておいしそうで、その食べる姿にこちらまでよだれが出てしまいそうな程、そそられるのだろう。
展示室の入り口、各スタジオジブリ作品の料理シーンの画面写真が私たちを出迎える。その横には、ずらりと並べられたおいしそうな料理の数々。「おいしそう」「食べてみたい」自分の印象に残っている食べ物を今一度思い返してほしい。
次に、展示室へと歩を進めるとまずはレトロなレストラン風の第1室。ここでは食事シーンを貴重な絵コンテや原画などの資料で振り返ることができる。
『魔女の宅急便』であなたが印象に残っている食べ物は何だろう。食事シーンが数多く登場する本作の中でも、代表的なひとつとしてあげたいのが、マダムの作った「ニシンとカボチャのつつみ焼き」だ。
主人公のキキが、宅急便の依頼をしてくれたマダムにお願いされ、孫娘に届けたこのパイ。「私、このパイ嫌いなのよね」。孫娘はそういったものの、映画を見た誰もが一度は食べてみたいと思ったのではないだろうか。そのシーンの秘密が、この展示で紐解けるかもしれない。
『千と千尋の神隠し』は、食べるシーンがたくさん出てくる作品のひとつだ。展示の中では、千尋のお父さんが不思議な町の食べ物(神様の食べ物)を頬張るシーンの秘密を探る。特に食べ物を見るキャラクターの「目」の繊細な描写は、スタジオジブリならではのリアリティーが追及されていることを実感できるだろう。