昨日はプレゼンテーションや、ジュエリー・アクセサリー・アートワークの展示、ヴェルニサージュ(オープニング・パーティー)などが開催されたが、2日目はファイナリストたちのインタビューから始まった。
ホテルの一室にファイナリストが集まり、取材を受けられるような機会が設けられている。ファイナリストたちは、そこで自分の作品を世界に知ってもらうために取材に応え、作品を説明する。ほとんどが海外からの記者ばかりで、英語での会話が目立っていた。
木村康人(Yasuto Kimura)も、他のファイナリストと同じように英語で海外の取材に応えていた。
彼が記者の方に見せていたのは自作のブックであった。「このブックは日本の夕刊をモチーフに作っているんです」と、ここでもテーマの"TOKYO hard work style"を表現していた。
ITSの審査は、作品を紹介するブックの審査から始まる。そこからファイナリストが決定し、プレゼンテーションに入ることになる。そして、このブックの制作が審査の過程の、とても重要な部分でもある。いくら縫製が上手くても、技術があったとしても、自分の世界観・コンセプトが伝わらないブックだと、落選してしまうからだ。
東京造形大学卒業、エスペランサ靴学院出身の得能慎司(Shinji Tokuno)も、日本からのファイナリストの一人。
彼の作品は、日本古来からの価値観である「SABI(寂び)」がテーマ。「SABI(寂び)」=経年劣化したした様子から受けとれる"美しさ"と"不潔さ"という相反した価値観を表現した。日本古来からの色糊捺染(いろのりなっせん)によって、無染色の革を染め「剥がれ」をデザインに取り入れたコレクションは、不思議な風合いを感じさせる。
武田麻衣子(Maiko Takeda)も日本人ファイナリストの一人でITSに参加している。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで帽子制作を学び、卒業制作が世界的アーティスト"ビョーク"に使用されるなど、今注目の若手デザイナーの一人だ。
帽子の輪郭をもっと曖昧なものにできないなだろうか、もし雲を着たらどういう感覚がするのだろうか、というアイデアから試行錯誤を重ねて、最終的に今の作品が出来上がったという。今後は何がしたいか?という問いには「これから先も、自分の作品を作り続けていきたい」とクリエイティブな精神を見せつけてくれた。
また、今回日本最年少でファイナリストに残ったのは栗原純子(junko kurihara)。彼女はまだ、23歳だ。作品は自身の"視界"からインスピレーションを得ている。コンタクトを外したときの景色はぼやけていて、何が映っているかわからない。だが、それはまるで印象派の描く絵画のように美しく感じることもできる。その経験から、色を抽出し、ピクセライズできるアクセサリーを制作し、審査員に評価されファイナリストに残った。
午後はITSの事務所に向かった。そこには、2002年から去年までのファイナリストのブックや制作された作品がアーカイブされていた。
歴代のブックを補完する部屋の周りには、提出された作品が所狭しと並んでいる。2007年のファイナリストであり、ディーゼル賞を受賞したタロウ ホリウチ(TARO HORIUCHI)の作品もここにある。
ITSの事務所にある数々の作品が、コンテストの長い歴史を語っているようで、何時間いても飽きない場所であった。
そして、次は授賞式レポート、ニコラ・フォルミケッティ(Nicola Formichetti)のインタビューを公開。ITS審査員でもあり、ディーゼルのアーティスティック・ディレクターでもある二コラが今の若いデザイナーに伝えたい想いとは!?