展覧会「111年目の中原淳一」が、東京の渋谷区立松濤美術館にて、2024年6月29日(土)から9月1日(日)まで開催される。横浜のそごう美術館などでも開催された巡回展だ。
イラストレーションから雑誌編集、ファッションデザイン、インテリアデザインまで、多彩な活動を展開した中原淳一。戦前に雑誌『少女の友』でデビューし、挿絵や表紙で人気を博した中原は、やがて編集にも携わってゆくことになる。そして戦後には、自身が編集長を務める『それいゆ』を創刊し、その後も『ひまわり』をはじめとする雑誌を手がけていった。
中原の仕事は、人々が夢と希望を持って「美しい暮らし」を志してほしい、という思いのもとで展開されたものであった。その全貌を紹介する展覧会「111年目の中原淳一」では、『少女の友』や『それいゆ』、『ひまわり』、『ジュニアそれいゆ』といった雑誌に掲載された挿絵や表紙の原画をはじめ、デザインした衣服、自ら手がけた絵画や人形などを一堂に集めて展示する。
戦前、中原は『少女の友』の専属画家として、挿絵や表紙絵を描いている。中原の描く少女像は、大きな瞳と細長い手足を特徴としており、当時の少女たちはそこに自らの理想の姿、あるいは自分自身を見たのだった。しかし戦時中、中原の描く少女像は「華美で不健康」と非難され、中原は同誌を去ることとなる。第1章では、『少女の友』やスタイルブック『きものノ絵本』など、戦前から戦時中にかけての仕事を紹介する。
終戦の翌年、中原は『それいゆ』を創刊した。「美しい暮らし」を提案する同誌では、オリジナルの洋服のデザイン、髪型、美容、インテリア、手芸ばかりでなく、文学や音楽、美術など、幅広い内容が扱われた。中原にとって「美しさ」とは、外面的な流行を追いかけるのではなく、知性と審美眼を養うなかで実現されるものであった。第2章では、「美しい暮らし」を衣食住ばかりでなく内面から叶えることを提案した、『それいゆ』の仕事に光をあてる。
『それいゆ』を刊行した翌年、中原は月刊誌『ひまわり』を創刊している。子どもでも大人でもない10代の「少女」を対象に、「よき少女時代」を送るための提案をした同誌では、ファッションにまつわる事柄を絵と文章で丁寧に説明している。その後、1954年に創刊された『ジュニアそれいゆ』では、写真のページを増やし、中原がデザインした服を仕立て方や型紙とともに数多く紹介した。第3章では、時代に合わせた内容と表現方法で「よき少女時代」を送ることを呼びかけた、これらの仕事を紹介する。
生涯にわたって、多彩な仕事に携わった中原。その出発点は、1930年の人形作家としてのデビューであった。20年代後半の都市部では、「手芸」として人形を作ることが中間層の女性のあいだで流行しており、こうしたなかで中原は人形を作るようになったのであった。また、雑誌では読者に人形作りを提案するほか、60年代の療養生活でも、身近な材料から男性の人形を作っている。第4章では、中原の人形制作に着目した展示を行う。
展覧会「111年目の中原淳一」
会期:2024年6月29日(土)〜9月1日(日) 会期中に一部展示替えあり
[前期 6月29日(土)〜8月4日(日) / 後期 8月6日(火)〜9月1日(日)]
会場:渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
開館時間:10:00~18:00(金曜日は20:00閉館)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(7月15日(月・祝)、8月12日(月・振)は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)
入館料:一般 1,000円(800円)、大学生 800円(640円)、高校生・60歳以上 500円(400円)、
小・中学生 100円(80円)
※( )内は団体10名以上および渋谷区民の入館料
※土・日曜日、祝休日、夏休み期間は小・中学生無料
※毎週金曜日は渋谷区民無料
※障がい者および付添者1名は無料
※リピーター割引:観覧日翌日以降の本展期間中、有料の入館券の半券と引き換えに、通常料金から2割引きで入館可
【問い合わせ先】
渋谷区立松濤美術館
TEL:03-3465-9421