トム ブラウン(THOM BROWNE)は、2023年秋冬ウィメンズ&メンズコレクションを発表した。
1943年の初版以来、200以上の国や地域の言葉で翻訳されている『星の王子さま』。砂漠に不時着した飛空士と、彼方の星からやってきた「王子さま」の物語を描く不朽の名作だ。トム・ブラウンの2023年秋冬コレクションは、そんな『星の王子様』の冒険をプレイフルなクリエイティビティで表現している。
不時着した飛行機を思わせるセットを背景に登場したのは、二人の人物。一人はヘルメット型のバッグを手に、赤、白、青のストライプで縁取った宇宙服のようなキルティングのボイラースーツを着用。そして見覚えのあるゴールドのヘアスタイルが特徴的なもう一人は、金色の刺繍でバオバブの木の根が描かれたドレスに、グレーのフランネルツイードジャケットを合わせている。これらのルックは、砂漠に不時着した“主人公”と“王子さま”を表現したものだろう。
二人に続くのは、王子様がパイロットと出会う前に訪れた6つの惑星に住む住人たち。彼らが身にまとうインターシャシルクの素材を使った白いオーガンザのドレスには、6つの惑星をそれぞれ表現したモチーフがあしらわれている。どこかコミカルなタッチで描かれたこのグラフィックにも表れているように、今季のコレクションは、──かつて私たちが読者だった頃のように、<子供の視点>を通して描かれているように感じられる。
たとえば、その後のランウェイに登場するツイード仕立てのジャケットやコート、スリーピースのなどのテーラードアイテム。ボクシーに仕立てられた厳格なタイドアップスタイルは、1980年代の映画『ワーキング・ガール』を彷彿とさせるパワーショルダーをさらに強調したようなシルエットによって、“大人たち”がどこかアイロニックに表現されているようだ。
一方、“子供たち”を思わせるスタイルでは、先ほどのテーラードスタイルとは一転、機転に富んだプレイフルな再構築ウェアが登場する。スーツやシャツ、ネクタイは分解、裏返しなど、自由な発想で組み合わされ、スカートやコルセットに。メゾンのシグネチャーであるグレーのストライプスーツを用いたアイテムも多く登場した
またコレクションにはゾウやフォックス、バラといった作品に登場するモチーフが落とし込まれたバッグやシューズが登場。テーラードスタイル身を包んだ“大人たち”のパートでは、まるで時に囚われていることを暗示するかのような時計のモチーフが散見された。