シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)の2023年春夏コレクションが発表された。テーマは、「FRIDGES IN THE AIR」。
「真夏に大雪を降らせたい。」そんな想いからスタートした今シーズン。真夏に大雪を降らせることは“まやかし”であるが、実はそんな嘘やイミテーションこそが我々の日々を彩り、自信を与え、癒してくれるものだったりもする。デザイナーの小塚信哉に言わせれば、ファッションも“まやかし”だ。そして、嘘が持つパワーを声高らかに肯定できる点こそがファッションの長所なのだ。
タイトルの「FRIDGES IN THE AIR」は、“絵空事”を英訳した「CASTLES IN THE AIR」をもじったもの。あえて冷蔵庫をピックアップしたのは、使用目的も見た目もほぼ同じだが、中身にその人の生活感や価値観が出る「冷蔵庫」と、ユニフォームやワークウェアなど匿名性の高い服を着ることで逆にその人のパーソナリティや資質が浮き出ると考える小塚自身の「ファッション観」が重なったからだという。
ファーストルックに登場したのは、ナチュラルなグラデーションが目を惹くシャツ&ショートパンツのセットアップ。実はこれ、ゴーギャンの絵画を模写し、ゴブラン織りで仕立てたもの。あえて柄合わせをせずに生地を使用することで、今季のキーワードである“まやかし”を表現した。
「絵空事」というテーマから、洋服をキャンバスに見立てて“絵”を描いたアイテムも登場した。たとえば、エクリュのロングコートには、“王様”のイラストを小塚のカトゥーンチックなドローイングでオン。スキッパーシャツやオーバーサイズのジャケットなどにもマーカーで走り書きしたようなドローイングをあしらい、ラフでポップな遊び心をプラスした。
スニーカーには、日本語でも英語でも“騙す・誤魔化す”といった意味を持つ「狐」のモチーフを使用。イミテーションや添加物、嘘だったとしても、パワーや役割があり素敵であるとの想いを込めている。
さらに会場の視線を集めたのは、言葉通り“絵画を着ている”ユニークなルックだ。キャンバスの中央部分にシャツの襟がドッキングされており、中から首を出せるように。前方から見ると迫力満点だが、このキャンバスの下には下着のみしか着用しておらず、その姿はどこか童話『裸の王様』の滑稽さを彷彿とさせる。
洗いざらしのアイボリーやエクリュ、ブラウンなどナチュラルなカラーパレットに差し込まれるのは、目にも鮮やかなグリーンカラー。青みがかったグリーンや黄み寄りのグリーンなど、色調の異なる緑を随所に投入することで、コレクションの柔らかな雰囲気を鮮烈に締めた。