タエ アシダ(TAE ASHIDA)の2022年春夏コレクションが、2021年10月27日(水)、東京の新豊洲Brilliaランニングスタジアムにて発表された。
デザイナー・芦田多恵デビュー30周年となる今季。ショーの開催は、2020年春夏コレクション以来となる。そしてそのコレクションは、光のきらめきとダイナミックな躍動感を、エレガンスの一語へと昇華することにあるように思われる──それはちょうど、ショー後半に登場したメタリックな輝きを帯びたドレスが、意外なほどのしなやかさでもって軽快に揺らめき、繊細なドレープの表情を刻一刻と変幻させてゆくように。
まず、光に色彩はない。光はひたすらに白く、眩しい。そして光の白と対となるところに、陰の黒がある。ウエストをシェイプさせたジャケットやミニマムにまとめたドレスなどは、白と黒とで光沢をまといつつまとめられている。あるいは、メンズのダブルブレストジャケット、フリンジを配して花のモチーフを飾ったウィメンズのジャケット、スカートやパンツなどは、これら白黒を織り交ぜた千鳥柄でクラシカルなニュアンスを含ませた。モノトーンでまとめたストライプも多用されている。
光それ自体はひたすらに白いものの、それは鮮やかな色彩を可視化するものであり、また植物を育むものでもある。ロングジレや釣鐘型に広がるスカートには豊かな植物柄を、幾分トーンを抑えつつあしらう一方、シアー素材を用いたブラウスやワンピースには、赤・ピンク・緑・青と、鮮やかにその色彩を主張してやまない花の姿を繊細にのせている。
では、躍動感とダイナミズムとは。ディテールでいえば、上述の白と黒のジャケットではラペルをさながらスカーフのように分離し、しなやかな揺らめきと装飾性を兼ね備えているといえる。よりドラスティックには、左右のアシンメトリーだ。純白のスカートは一方のみをプリーツも優雅なレース素材に。ミニマムなワンピースはアシンメトリックなシルエットを基調として、一方に図案化した花柄のパンチングを施して。あるいは、艶やかな花柄のモチーフを施したレースも同様にして用いられている。
そうしたダイナミズムは、大きく円弧を描くかのようなドレスで極致に達する。右肩を起点に、ウエストの左へ、足元の右方へと、フロントで大胆に孤を描いたその軌跡はヘムラインへとなめらかにつながり、足元で波打つようにひだを織りなし、緩急ついた裾広がりのシルエットを形成した。