金沢の国立工芸館では、国立工芸館石川移転開館1周年記念展「《十二の鷹》と明治の工芸」を、2021年10月9日(土)から12月12日(日)まで開催する。
明治の改元以降、近代国家の礎となる政策が次々に打ち出され、日本の社会構造は大きく変化していった。そうしたなかで工芸家も、武士階級という有力な後ろ盾を失い、生き残りの方法を模索していた。明治の工芸の迫力──器の表面から飛び出さんばかりの細工を施した陶器や金属器、あるいはまるで生きているかのような表情を見せる動物の置物など──とは、激動の時代に対峙した工芸家の必死さを映しだすものだといえるのかもしれない。
一方で現在、デジタル化が急速に進行するなかで、インターネットによる情報化や新たなデジタル機器は、人びとの生活ばかりでなく、もの作りの領野にも確かに影響を及ぼしている。
国立工芸館石川移転開館1周年記念展「《十二の鷹》と明治の工芸」では、鈴木長吉《十二の鷹》を筆頭に、明治から現代までの工芸作品約100点を紹介し、社会構造の変化に対して工芸家たちがいかにして立ち向かってきたのかに光をあてる。
鈴木長吉は明治の名工であり、時代に合わせて自身の活動を大きく変えた工芸家のひとりであった。その長吉が制作の指揮を執って完成させた大作が《十二の鷹》だ。同作は、日本古来の技法を駆使し、当時最高の技による最新の「美術」作品として世界に提示しようと、1893年にシカゴ万博で発表された。本展は、近年復元された飾り布とともに、《十二の鷹》全12羽を発表当時と同じ姿で展示する北陸地域初の機会となる。
また、会場では、江戸から明治へと社会構造が大転換を迎える激動の時代を生き抜いた工芸家による作品から、七代錦光山宗兵衛《上絵金彩花鳥図蓋付飾壺》や初代宮川香山《鳩桜花図高浮彫花瓶》などを展示。さらに、二十代堆朱楊成《彫漆六華式平卓》や岩田藤七《彩色壺》など、明治から大正、昭和へと世相が移り変わるなかで制作された工芸作品も目にすることができる。
国立工芸館石川移転開館1周年記念展「《十二の鷹》と明治の工芸」
会期:2021年10月9日(土)〜12月12日(日)
会場:国立工芸館
住所:石川県金沢市出羽町3-2
開館時間:9:30〜17:30(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(10月25日(月)、11月1日(月)は開館)
観覧料:一般 500円、大学生 300円
※高校生以下および18歳未満、障害者手帳の所持者と付添者1名までは無料
※オンラインによる事前予約(日時指定・定員制)を導入、当日券は若干数を用意(詳細は美術館公式ウェブを確認のこと)
【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)