アンダーカバー(UNDERCOVER) の2021年秋冬ウィメンズ・メンズコレクションが、2021年3月19日(金)、東京・天王洲アイルのWarehouse TERRADAにて発表された。なお、東京での単独ショーは19年ぶりとなる。
身体は何にでもなれる。何にでも? たぶん、否。けれども眠りのなか、夢のなか、どこか現実の感覚と繋がるこの想像力の空間のなかならば、そんな望みを託してもいいのかもしれない──あるいは、衣服にも。
暗闇に沈んだ空間に、朧げな光が差す。眠りへと誘う暗闇。ペールトーンのパジャマパンツとともに身にまとうのは、温かなニットのロングカーディガン、続いて薄手のニットカーディガンを切り替えたパジャマシャツ。ノスタルジックなノルディック柄に重なって、バックには些か奇怪な人型がその影を見せる。
暗闇。ニットにのせられた影がほのめかしていたように、展開されるのは、2021年3月に『シン・エヴァンゲリオン劇場版:‖』も公開されている「エヴァンゲリオン」の、どこか退廃のムードを帯びた世界。フードを被ったロングコートは、合成素材の光沢を帯びた質感がさながら防護服のようでもある。ダウンジャケットもまた、キャラクターを彷彿とさせるカラーリングに。そして軽やかに揺らめくチェスターコートやケープなどには、ブラック地に鮮烈なグラフィックを大胆に施した。
ふたたび会場は暗転し、衣服のフォルムは目眩くばかりに転調を重ねてゆく。複数の素材を使用したコートやブルゾンには、透明で冷ややかなPVC素材を組み合わせ、ニットの柔らかな質感と穏やかな色味と対比をなしている。
首に、袖に、裾にと艶やかにひだをなすボレロや、ショート丈・ボリュームスリーブのダウンには、肩から湧きたつようにして薔薇の花のモチーフが咲き誇る。ここでは織物とそのカッティングでなく、むしろ花弁状のパーツが数多と蝟集して、装飾である以上に衣服を構築している。また、花のごときラッフルは、ブルーやピンクといったヴィヴィッドなダウンウェアにも豊かに咲き乱れ、ショートな丈感ながらも裾は波打つようにうねり、他方でラッフルが華々しく肩を腕をと覆い尽くす。
そんな薔薇の花も、たちどころにテキスタイルという平面に落ち込んでしまう。ボリューミーなダウンジャケットはショートな丈感。また、ノーカラージャケットには薔薇柄をあしらったブルゾンを、ライダースジャケットには同じく薔薇のピークドラペルジャケットを重ねるように組み合わせた。同様に、ベストを重ねたデザインのブルゾンやトレンチコートなど、レイヤリング構造は数多く展開されている。
いったんは平面の柄へと落ち込んだ、この薔薇という花は、いまいちど“もの”としての確かな手触りを伴って、衣服の上に散りばめられる。繊細な薔薇のモチーフを数多とあしらったノーカラーブルゾンは、ベースのフォルムこそシンプル、しかしボリューミーに膨らむフリルは、身体それ自体のシルエットから逃れんと湧きたつようだ。湧きたち、平面に沈み、また“もの”として散りばめられる──変幻自在にフォルムを織りなすこの薔薇の花に、夢の身体を重ねても良いのかもしれない。