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インタビュー|写真5

なぜ絵本を作るのが自分に向いていると考えましたか?

一番大きいのは、そもそも僕は日本人だなっていう。日本人は、制限のなかで工夫するのがめちゃくちゃ強いですね。スポーツでも、体格が無制限な競技よりも、ボクシングや柔道のように体重別で闘うもののほうが強い。予算をかけようのない漫画も同じです。なので、まずは日本人として向いていることをやろうと思いました。

絵本は、言ってしまえばディズニーやハリウッドのように潤沢な予算があっても、使いようがない。予算勝負でなく、シンプルに作家としての才能の勝負になるんで、絵本のようにサイズ感が限られているものならば世界一を取れる、そして絵本を軸に活動を広げられると思いました。

〈“ギフト”、絵本の可能性〉

絵本の強みとは?

まず、お土産になりうるということ。人がどこかに行けば、その思い出を保管しようとしますよね。僕はよく「光る絵本」展みたいなものを国内外でずっとやってるんですけど、個展を開き続ける限り、思い出をお土産(絵本)として持ち帰ってもらえます。

2つ目は、ギフトになりうるということ。これは多分、これからの大きなテーマになると思います。それこそ貧富の差が激しくなって、お金がある人と、そうでない人を埋めてくれるものって何なんだって考えたときに、貧しい人はものがない、お金持ちはものはあるけど、感謝されること、ありがたられることが足りていない。この2つを繋いでくれるのが贈り物だなと。つまり、お金持ちが支援や贈り物をして、それをもらった貧しい人から「ありがとう」が返ってくるということですね。

インタビュー|写真6

ギフトの条件にはどのようなものがあるのでしょうか?

まずは、手に取ったときの重厚感。ソフトカバーのビジネス書はお土産にもギフトにもなりえないじゃないですか。ハードカバーのような重厚感があるという点で、絵本はすごく良いです。また、カバーを外せば1枚の絵画のように、インテリアとしても機能します。

あと、絵本が売れ続けて、ギフトとして広まれば「ギフト力」が上がるなと。知らないものをもらうよりも、みんなが知っているものをもらったほうが嬉しいじゃないですか。絵本も、お父さんお母さんは、自分が知っている……。つまり、ネタバレしているものしか買わない。そうすると、ここって無限ループだなって。売れれば売れるほど、さらに売れるものになるなと思った時に、絵本を僕のエンタメの中心にすれば、強いなと思いました。

インタビュー|写真7

〈街の“設計図”としての絵本〉

『えんとつ町のプペル』では、複数人が分業で手掛けたパーツを集めて、1つの世界を作り上げています。西野さんの世界観を表現するには、絵本が最良の手段だったのですか?

世間一般のイメージからはずれているかもしれませんが、僕自身がやりたいのは絵本そのものじゃないんですよ。むしろ街を作りたい。美術館、移動遊園地、スナックも作っていますし。《太陽の塔》や東京タワーのように、物理的にでっかい作品に興味があります。

でっかいものといっても、星や国は難しい。じゃあ次の単位は街だなって思っていて。でも、「せーの」の掛け声で各々がバラバラに作り始めても、結果的に無味無臭の街ができてしまう。街の個性や統一感を生むためには、景観法、道徳や文化といったルールが必要だなって。そこで絵本。僕の絵本は“街の説明書”で、「えんとつ街」という街をみなさん再現してください、という気持ちで作っています。

だから、僕の作る「えんとつ街」は、みんながちゃんと作れるように、今ある家屋をリノベーションすれば再現できます。つまり、先人が作った日本家屋に、提灯と煙突をつけてしまえば、僕の街に寄せられるので、0を1にすることはしなくていいのです。

インタビュー|写真8

『えんとつ町のプペル』でも、背景の街まで緻密に描きこまれていました。物語を現実へと寄せるのが、まさしく緻密なディテールだということですね。

そうです。それが超大事で、実際に映画でも、ここ(オンラインサロンメンバー専用スナック「CANDY」)が出てくるんですよ。僕の絵本は街の設計図なので、アニメーターだけはなくて建築士も入っていて、アニメーションの段階から建物が現実的に再現可能なようにしています。だから、一般的な絵本とは、お金の流れから役割まで、全然違うかもしれません。

インタビュー|写真18

最後に、今後の創作活動の展望をお聞かせください。

一番の理想は、絵本作家を辞めるということですね。僕自身は作るのを辞めて、二次創作を推奨すること。僕の作品を基にして、「えんとつ町の何とか」を誰かが勝手に作ってほしいです。僕だけで広げられる範囲はあるのですが、触っている以上、自分の影響力の中だけになってしまうので、著作権ももっと曖昧に、フリーにしたいです。

設計図をもとに、多くの人が参加してユートピア都市を実現してほしいと。

たとえば京都では、何となくみんなが街に対するイメージを持っていて、建物を作るときもそれを守っているじゃないですか。個性のある街って、そのようにみんながやんわりルールを守ったうえで二次創作をしている街のことだと思いますし、何より僕自身はそういった世界観に興味がありますね。

豪華キャスト

物語を彩る個性豊かなキャラクターを紹介。窪田正孝や芦田愛菜ら、キャラクターに命を吹き込む豪華キャスト勢にも注目だ。

インタビュー|写真14

プペル(窪田正孝):ゴミから生まれたゴミ人間。

ルビッチ(芦田愛菜):父の教えを守りいつも空を見上げ、えんとつ町からは見ることができない星を信じ続ける少年。ルビッチに出会い、ふたりだけの強い絆が生まれる。

ブルーノ(立川志の輔):少年ルビッチの父親。ルビッチに信じる勇気を教えた。原作者の西野は、声を務める落語家の立川志の輔を、実際にブルーノのモデルにしたのだとか。

ローラ(小池栄子):ルビッチを信じる母。

インタビュー|写真9

<そのほかキャラクター>
おしゃべり鉱山泥棒スコップ:藤森慎吾
えんとつ町を統べるレター15 世:野間口徹
星を信じるルビッチを笑うアントニオ:伊藤沙莉
影の独裁者のトシアキ:宮根誠司
アントニオの友達デニス:大平祥生(グローバルボーイズグループ JO1)
えんとつ掃除屋のスーさん:飯尾和樹(ずん)
頼れる煙突掃除屋・アイパッチ:山内圭哉
えんとつ掃除屋のボスであるダン:國村隼

オープニング主題歌に、HYDEに「HALLOWEEN PARTY-プペルVer.-」

インタビュー|写真20

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