ファセッタズム(FACETASM)が2015年春夏コレクションを、2014年10月18日(土)、渋谷ヒカリエにて発表した。
ソフィア・コッポラの映画『SOMEWHERE』を観た人であれば、誰もがご存じの曲であるザ・ストロークスの『 I'll try anything once』が、ショースタート前の会場で流れる。今季のテーマはタイトル通り「SOMEWHERE」だ。
デザイナー落合宏理は、テーマについて次のように話す。「華やかな世界で、ドレスアップしているところからドレスダウンする瞬間ってすごく美しかったり、気持ち的に空っぽになったり、いつもの自分に戻ったり……。“ドレスダウン”っていろんなイメージがあるなって思いました。それでファセッタズム流に、ドレスダウンを今回考えてやってみました」。
映画のタイトルをテーマに挙げているが、落合が語る通り今季も“ファセッタズム流”の要素が色濃く表れている。デザイナーが好むハードコアカルチャーやスケートスタイルを思わせるディテールがモード感たっぷりに取り入れられているのが全体の特徴だ。特にハードコアの「X」モチーフは、Tシャツやプルオーバーのプリントはもちろん、チェスターコートのラペルをクロスさせたり、シャツの上から生地を重ねて表したりと、斬新な手法で表現された。
東京モードを代表するブランドならではの自由な発想によるディテールやレイヤードは、一着一着に異なるアイディアで取り入れられている。ウィメンズウェアではシースルー地の使い方が面白く、例えばスウェットプルオーバーにプリーツキャミソールを重ねたり、MA-1にしてみたり……。キャミソールはインナーで、MA-1はレザーなどという固定概念はお構いなしの、斬新な提案だ。またメンズウェアではTシャツのバックスタイルをすべてフェザーにしたほか、ライダースベストには大きく切り込みが入っているなど、ユニークな仕掛けは止まらない。
また型破りなアイディアは、丈感からも感じられる。ジップアップポンチョの下にひざ下丈のシャツを合わせていたり、腰下まであるワークコートの下にロング丈のチェックジャケットを着ていたり。そんな長めを意識したレイヤードスタイルだが、パンツはロールアップで短くして、バランスをとっているのが分かった。
「“モードとストリート”ってよく言われるんですけど、そんなに意識したことってありませんでした」とショー後に明るく話す落合。そんな彼が率いるファセッタズムは、海外進出のサポートが得られる、東京ファッションアワードを昨日受賞し、来年にはパリで展示会も行うという。東京の勢いあるクリエーションは、世界中のバイヤーたちの目にどのように映るのか、今後の進展が楽しみである。