映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の公開に向け、ウィリー・ウォンカ役を務めるティモシー・シャラメと、ウンパルンパ役のヒュー・グラントに対談インタビュー。名作ファンタジー映画『チャーリーとチョコレート工場』の“はじまりの物語”を描くにあたって、オファーを受けた時の心境や、演じる上で大切にしたことについて、たっぷりと話を伺った。
もともと“ヒューの大ファン”だったというティモシーと、“ブリティッシュ・ジョーク連発”でユーモアたっぷりのヒュー。2人の共演秘話も明かしているので、是非シアターに行く前にインタビュー記事をチェックしてみてほしい。
映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が、2023年12月8日(金)に公開へ。『チャーリーとチョコレート工場』でジョニー・デップが演じたことで有名なウィリー・ウォンカの“若き日”を描く、名作ファンタジーのはじまりの物語だ。チョコレート工場がオープンする以前の時代が舞台となり、ウィリー・ウォンカの知られざる過去が明かされる。
世界的名作ファンタジー『チャーリーとチョコレート工場』で有名なウィリー・ウォンカの若き日を描く、映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』。作品のオファーを受けた時の率直な感想や、演じる上で大切にしたことを教えてください。
ティモシー:ウィリー・ウォンカのような世界的に有名なキャラクターを演じるということは、前作のイメージを大切にしながら、新しいものを求められるということ。本作は、ウィリー・ウォンカがチョコレート工場を持って成功する前の“オリジン”の話なので、過去作の彼とはまた違った魅力…野心、若さ、希望を引き出せるよう意識しました。
ヒュー:オファーを受けるのは恐ろしいことでしたよ。『チャーリーとチョコレート工場』は色んなファンの人に愛されていて、すごく守られている映画。皆さんの想いが強い分、新しいキャストと新しい脚本でやるとなると、映画を観る前から嫌われてしまう可能性もあると思ったんです。
私はその“嫌われスイッチ”を、ちょっとでも好かれるほうへ持って行こうとしているけれど…どうだろう。完成した映画はまだ見ていないのですが、予告編を見る限りでは、ティモシーが嫌われることはなさそうでしたね。(笑)
過去作から継承した部分と、今回新たにチャレンジした部分と両方あると思いますが、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』と過去作との大きな違いは何でしょうか?
ティモシー:そうですね。ジーン・ワイルダーとジョニー・デップが演じるウィリー・ウォンカは両方とも、ちょっぴり子供っぽいキャラクターです。成長を拒んでいる節があり、どこか寂し気で、奇妙な部分がある。そしてその2作では彼はもう成功していて、自分のチョコレート工場を閉めるという決断もします。
でも本作の若きウィリー・ウォンカは、とにかく自分のチョコレートを世界に広めたい、自分の人生を前向きに築いていきたいと願う、野心に満ちた青年です。頭のネジは緩んでいるけれど、20年後の彼と比べればよっぽどマシでしょう。(笑)
過去作とはまた違ったウォンカを、どのように作り上げたのですか?
ティモシー:演じる上でイメージしたのは“不死鳥”です。何があっても諦めず、絶対に止まらないウィリー・ウォンカの姿を、何度でも蘇るフェニックスに重ねました。
ヒュー:何かのイメージを持つことは演じる上で良いことですね。
ウンパルンパも、ウォンカに負けず劣らず個性的なキャラクターです。ヒューさんご自身が考える、ウンパルンパの1番の魅力とは何でしょう?
ヒュー:非常に自己中で、手厳しく、頑固で、そういう負の部分があるところが好きです。ロアルド・ダールの原作の中でも、ウンパルンパって子供が大嫌いなんですよ。ファンタジックな見た目なのに、ダークな一面を備えているのがユニークですよね。
ちなみに先ほどティモシーが“不死鳥”をイメージして役作りをしたと言っていましたが、私は、若い時にスコットランドで知り合ったある男性をイメージしてウンパルンパを演じました。赤毛の男性で、いつも怒っていて、すぐに人を見下す嫌なやつだったんですが、それがウンパルンパのキャラクターとぴったりかなと。(笑)
では演じていて大変だったことは?
ヒュー:ぜーんぶですよ。(笑) もっと楽にやりたかったんですけどもね。
ミュージカルシーンなんかは、年を取るごとにどんどん緊張しやすくなっています。緊張のせいで歌い出すとキーが外れてしまったり。だから、心を落ち着かせる薬をいっぱい飲んでいるんです。(笑)
ヒューさんでも緊張するとは意外です。緊張した時、あるいは自分のイメージ通りにいかずに悩んだ時、どのように克服しますか?心を落ち着かせる薬以外でお願いします。(笑)
ヒュー:私の場合は、“ホワイトノイズ”を聴いて心を落ち着かせます。ちょっと戻れる。今作でも撮影の合間に、ヘッドホンをつけて聴いていました。ティモシーでも緊張することはある?
ティモシー:緊張なんてめちゃくちゃあることですよ。自分のイメージ通りにいかずに悩んだ時は、もう次のことをやろうって切り替えます。考えすぎない。考える前にとにかく進む。前に行くことですね。
※ホワイトノイズ…雑音の一種で、様々な周波数の音を同じ強さでミックスして再生したノイズ。集中や安眠を助ける効果があると言われている。
ウィリー・ウォンカとウンパ・ルンパは、ある時は敵であり、ある時は親友のようであり、凸凹していながらも“ベスト”な関係性だと思います。お2人が思う、“ベストコンビ”な人はいますか?
ヒュー:コリン・ファースかな。“愛憎関係”というか“ライバル”というか…。もう彼には不幸だけを望む。でも実は好きなんですよ。(笑)
ティモシー:僕が思う、“敵でもあり友達でもある人物”は、映画『レディ・プレイヤー1』などに出ている俳優のタイ・シェリダンです。僕は20歳になるまで、彼のせいでずっと役がもらえなかったので。(笑)
作品全体の話に戻ります。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のテーマは「夢」ですが、夢を追うウォンカを見て、どんなことを感じましたか?
ティモシー:常に一生懸命で、希望を捨てず、楽観的であれば夢は叶うと信じている、そんなウィリー・ウォンカの姿に心を打たれました。自分の成功を望まない人もいる中で、自分をサポートしてくれる友達を一番大事にしているところも良いですよね。
ヒュー:私はがっくり落胆したような男なので…。あんまり夢は叶ってないと思うんですね。叶わないということは、ちょっぴり厳しくて辛いけど、夢ってそういうものなのかもしれない。…「夢」というテーマになぞらえて、ちょっとはポジティブなコメントができたかな?(笑)
ティモシーさんとヒューさんは初共演だとか。お互いの印象はいかがですか?
ヒュー:こんなに若い人に嫉妬するべきではないと分かっていますが、ティモシーの才能に嫉妬していました。彼は若い頃から成功し続けてきて、すごいキャリアを持っているじゃないですか。そして、世界中が彼を愛している。だからいっそ、嫌いになりたかった。(笑)
でも実際に会ったら好きになってしまいました。ある日現場で、少しゴシップ的な質問をしてみたんです。普通、俳優は、ゴシップのことを聞くと、「ごめんなさいちょっと。」って言うんですよ。でも彼は、なんでもペラペラ言ってくれるから本当に面白いよね。
ティモシー:(笑)。僕はもともとヒューの大ファンで、映画も沢山観ていたんです。非常に才能があるし、ハンサムだし、楽しい人だし。そして今回一緒に仕事をしてみたら…非常に才能があるし、ハンサムだし、楽しい人だってことが分かりました。(笑) あ、でも、ユーモアはかなり辛辣です。
お2人の和気あいあいとした雰囲気が伝わります。(笑) 撮影中は一緒にチョコレートを食べたりしました?
ティモシー:実は、ヒューと一緒に撮影したシーンは少なくて、そういった時間はなかったです。僕個人としてはチョコレートの中で泳いだくらいだから、一生分のチョコレートを食べたけれど、 ヒューはどう?
ヒュー:私は全く貰えませんでしたよ。
ティモシー:(笑)。 ちなみに僕はレージネッツが1番好きなんだけど、ヒューはどんなチョコレートが好きなの?
ヒュー:高品質じゃない、安いチョコレート。これでもか!ってくらい砂糖がいっぱい入ってるやつ。気取った感じのチョコレートは好きじゃないんだ。
そういえば、ホテルに美味しいチョコレートが置いてあって、ちょうどさっき子どもたちにテレビ電話で「日本にはこんなのがあるよ!」って伝えたところだよ。ぜひ持って帰ってきてと言われてる。スーツケースが汚れそうだけどね。(笑)
※レージネッツ:レーズンをチョコレートでコーティングしたお菓子、商品。アメリカで人気。