セリーヌ オム(CELINE HOMME)の、2023年冬コレクションを紹介。
今季の着想源となったのは、パリのナイトクラブ「LE PALACE」。クリエイティブ・ディレクターのエディ・スリマンが16歳頃から足繁く通った場所であり、その後クチュリエになることを決意するきっかけとなった場所でもある「LE PALACE」を出発点に、2000年代のロック、エレクトロ・シーンに回帰し、過去を“再発見”する現代の若者達のムーブメントを掘り下げていく。
中でも特に、現代の音楽シーンに影響を与えているバンドとして、1977年に結成された、ニューヨークのカルト的なプロトパンクバンド「スーサイド(SUICIDE)」に着目し、リスペクトを表現した。
コレクションの鍵を握るのは、タイトなレザーパンツ。幾何学的にスタッズを並べたり、きらびやかなラインストーンを装飾したりしてアレンジしたレザーライダースジャケットや、レザートレンチコートと合わせた「ダブルレザー」コーディネートをはじめ、カジュアルなトラックジャケットやデニムジャケット、クラシカルなチェスターコートと合わせたルックが披露された。
70年代のパンキッシュなムードを漂わせながらも、研ぎ澄まされた軽快さと端正な仕立てによって洗練された佇まいに仕上げているのが印象的だ。
ボトムスをタイトにした分、アウターにボリュームを持たせてシルエットにメリハリをつけたルックも目を引いた。タイガーモチーフやレオパード柄をダイナミックにあしらったカシミアのシアリングコートは、柔らかな起毛感がゴージャスな雰囲気を演出。また、カシミアや伝統的な織機で作られたイングリッシュツイードのコートは、ざっくりと羽織ることで、クラシカルな装いに粗野なエッセンスを効かせている。
加えて、“パワーショルダー”も散見されたディテールだ。テーラードジャケットの肩は張り出すような角度をつけ、コートやゆったりとしたブルゾンは、一回り大きく肩に分量を持たせることで緩急のあるフォルムに仕上げた。中でも、シンプルに仕上げたライダースジャケットは、肩からアームにかけて、曲線を描くようなフォルムに。ソリッドなレザースキニーパンツとの対比を際立たせ、エッジの効いた佇まいを提示している。
テーラードジャケットは、装飾を加えて華やかに。ゼブラモチーフのパネルを切り替えたショールカラーのジャケット、シャイニーなラインを走らせたストライプ地のスーツ、ゴールドの刺繍を全面に施したジャケットなどが登場。幾何学的な模様を描くジャケットの刺繍は、パリにあるクチュールのアトリエにて、手作業で施されたものだ。