ディオール(DIOR) 2023-24年秋冬メンズコレクションが、フランス・パリで発表された。
ディオールの歴史の中で、かつて史上最年少の弱冠21歳でメゾンの指揮を執ったイヴ・サン=ローラン。その若き天才が女性たちの為に描いた1958年の春夏ウィメンズコレクションが、今季の大きなインスピレーションのひとつとなる。過去からの引用を用いながら、イヴ・サン=ローランが求めたダイナミズム、そして今季ならではのマスキュリンとフェミニンの実験的な融合をモダンに表現。シルエットは柔らかく順応性がある一方で、着る人の意思によって表情を変えるハイブリッドな洋服がランウェイに登場した。
キーピースとなるのは、かつてイヴ・サン=ローランが手掛けた「アカシア」のレディースジャケットを再解釈したウールスーツだ。その大きく開いた特徴的なネックラインを強調しつつ、身頃全体をゆったりと仕立てることで、肩肘はらないエフォートレスなスタイルに。またベースとなるオフホワイトのボディには、ムッシュ ディオールのお気に入りの花“リリー オブ ザ バレー”を、2000以上に及ぶ手刺繍であしらうことで、メゾンの精神が息づく特別な一着へと昇華させている。
イヴ・サン=ローラン期の「パリ」 アンサンブルで用いられた セーラートップも、モダンな姿になってランウェイに。キャバリーツイルでゆったりと仕立てられ、縦長のフィッシャーマンズスモックとしても楽しめる一着へとアップデートされた。またボトムスには、キュロットに見まがうほど、落ち感のあるソフトなハーフパンツをセレクト。フェミニンさを内包しながら、伝統的なテーラリングで仕立てられたこのボトムスは、今季を象徴するピースとしてコレクション全体にも採用されている。
纏う者のアイディアによって表情を変えていく、ハイブリッドなピースも今季ならではだ。アームの一部をくりぬいたかのようなアウターやニットは、ロングスリーブのシャツをレイヤードすることで、より一層遊び心溢れるスタイルに。
またシャツそのものを再構築したようなピースは、本来の"上下”の位置から"左右”の位置へとボタンが横断。スリーブも複数連なるなど、個性豊かなウェアへとアップデートされている。
カラーは、グレーやブラック、アイボリー、ブラウンといったベーシックなパレットを基調に、鮮やかなマスタードや淡いブルーをアクセントに差し込んで。色柄を抑えた世界で登場したレオパード柄は、クラシカルなトレンチコートのポイントとして姿を現し、現代的なエッジィなムードをプラスしていた。