展覧会「ヴォイド オブ ニッポン 77展 戦後美術史のある風景と反復進行」が、東京・表参道GYRE内の「ジャイル・ギャラリー(GYRE GALLERY)」にて、2022年8月15日(月)から9月25日(日)まで開催される。
「ヴォイド オブ ニッポン 77展 戦後美術史のある風景と反復進行」は、戦後に語られた日本の「空虚」に着目し、現在活躍する日本の作家を通して戦後日本の美術家を紹介する展覧会だ。
フランスの批評家・哲学者であるロラン・バルトは、西洋が「意味の帝国」であるのに対して、日本は「表徴(記号)」に溢れ、中心の欠如した「空虚」によって特徴づけられることに注目、これを「表徴の帝国」と言い表した。たとえば東京の中心に位置する皇居には、かつては江戸城という政治の中心があったものの、現在は空漠とした森だけが広がっており、これは聖堂などを中心に発達した西洋の都市とは対照的なあり方である。バルトはこうした「空虚」を、天皇や都市ばかりでなく、歌舞伎の女形、礼儀作法、学生運動などに看取している。
いわば日本には、意味が欠けている。記号学において「記号」は、文字や音声といった「シニフィアン」と、意味内容を表す「シニフィエ」から構成される。「炎」という漢字=シニフィアンが、めらめらと熱く燃えて光を放つもの=シニフィエを指す、といった具合だ。するとバルトの視点では、日本においては無数のシニフィアンが溢れているものの、それに対応するシニフィエがなく、内容の空虚な記号の群れが連鎖的に展開されていることになる。
記号が指し示すものはひたすら空虚であるという日本の様相を異なる角度から捉えたのが、三島由紀夫であった。三島は1970年11月に自決する数ヶ月前、「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残る」という言葉を残している。
本展では、このようにして語られてきた日本の「空虚」を前提に、戦後日本美術を紹介。河原温、中西夏之 、高松次郞、 赤瀬川原平といった戦後日本で活躍した作家と、エンリコイサム大山や青山悟をはじめ今活躍する作家を取り上げ、作品単体では完結せずに時代を超えて連なってゆく時代的な連続性を浮かび上がらせてゆく。
展覧会「ヴォイド オブ ニッポン 77展 戦後美術史のある風景と反復進行」
会期:2022年8月15日(月)〜9月25日(日)
会場:ジャイル・ギャラリー
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
開館時間:11:00〜20:00
休館日:8月22日(月)
■出品作家
河原温、三島喜美代、中西夏之 、高松次郞、 赤瀬川原平、三木富雄 、北村勲、北山善夫、青山悟、 金氏徹平、加茂昂、エンリコイサム大山、須賀悠介、ミカタモリ 、国民投票
企画:飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)
【問い合わせ先】
TEL:0570-05-6990 (ナビダイヤル / 11:00〜18:00)