展覧会「超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?─分有、アウラ、超国家的権力─」が、東京・表参道GYRE内の「ジャイル・ギャラリー(GYRE GALLERY)」にて、2023年3月24日(金)から5月21日(日)まで開催される。
2021年3月、インターネット上の1枚のNFT画像が、デジタルアート史上最高額である75億円で落札された。この事例に見られるようにNFTアートは、2020年代初めにブームを巻き起こしたものの、それは瞬間的なバブルであり、瞬く間に崩壊したのだった。
NFT(non-fungible token)とは、暗号技術によってオンライン上のデジタルデータに所有権を付与し、「オリジナル」な価値がある資産として流通させるものだ。その嚆矢のひとつが、2014年、ニューヨークの芸術家ジェニファー&ケヴィン・マッコイが手がけた作品《Quantum》である。以降、ヴァーチャルな複製物に、現実の空間の特徴とされていた「唯一性」が人工的に与えられる可能性が拓かれることになった。
デジタルでありながら「オリジナル」でもあるNFTは、芸術の在り方に影響を及ぼすことになる。ここで、哲学者ヴァルター・ベンヤミンが複製技術と芸術の関係について論じた論考「複製技術時代の芸術作品」を思い起こそう。1936年に発表されたこの論考においてベンヤミンは、絵画といった複製不可能な芸術作品が持っていた、〈いま・ここ〉にしかないという唯一性を「アウラ」と呼ぶ一方、複製性を有する映画や写真が伝統的な芸術の「アウラ」を失効させるものとし、後者を積極的に捉えている。翻ってNFTの登場は、複製技術が唯一性を与えうるという状況を生みだす点で、「アウラ」の問題の再考を促すものだといえる。
展覧会「超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?─分有、アウラ、超国家的権力─」では、NFTを用いた芸術の試みに着目。ダミアン・ハーストやチームラボ、ルー・ヤン、ロバート・アリスなど、2014年以降の約10年間に制作されたNFTアートを取り上げ、それらを20世紀の美術史の系譜、とりわけ芸術制作において実際の制作物よりもコンセプトを重視するコンセプチュアル・アートと関連させて位置付けてゆく。
展覧会「超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?─分有、アウラ、超国家的権力─」
会期:2023年3月24日(金)〜5月21日(日)
会場:ジャイル・ギャラリー
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
開館時間:11:00〜20:00
観覧料:無料
■出品作家
ダミアン・ハースト、ラファエル・ローゼンダール、ルー・ヤン、ロバート・アリス、レア・メイヤース、高尾俊介(ジェネラティブマスクス)、チームラボ、ソル・ルウィット、セス・ジーゲローブ、森万里子、藤幡正樹、施井泰平、鎌谷徹太郎
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