特別展「デミタスカップの愉しみ」が、東京の八王子市夢美術館にて、2022年9月17日(土)から11月27日(日)まで開催される。
「デミタス」とは、濃いめのコーヒーを飲むためのカップだ。19世紀ヨーロッパにおけるテーブルウェアの発展や、コーヒー・カフェ文化の浸透などを背景に数多く生みだされたデミタスは、可憐なサイズのなかに高度な装飾技法が凝縮され、ジャポニスムやアール・ヌーヴォーなどの流行を取り入れつつ多彩なデザインで製作された。
特別展「デミタスカップの愉しみ」では、19〜20世紀にヨーロッパにおいて、アダレイやマイセン、ロイヤルウースターなどの名窯が手がけたデミタスをはじめ、個性豊かな約340点のデミタスを紹介する。
デミタスの始まりは、18世紀のフランスとされる。18世紀半ば、チョコレート飲料の携帯用カップとしてコンパクトなサイズ感のカップが作られた。当時、チョコレート飲料は貴重であり、王侯貴族の嗜好品であったことから、このカップは高級感のある多彩なデザインで作られ、人気を博したのだった。
その後、産業革命を背景にヨーロッパの陶磁器文化は飛躍的に発展し、中産階級、そして大衆にまで浸透。また、この時代には開国後間もない日本から、欧米人好みの日本製デミタスが輸出されるようになる。1850年代ごろからは欧米でジャポニスムが流行し、テーブルウェアのデザインにも取り入れられることに。その影響のもと、アール・ヌーヴォー、続いてアール・デコが展開されるなか、デミタスもその時々の流行を反映しつつ、デザインを多様化させていった。
一方、19世紀後半には、パリではコーヒーや酒を飲みつつ、当時の新しい芸術や政治を論じ、時代を動かす結社や運動を育む場となったカフェも誕生。加えてこの時代には、エスプレッソをはじめとするコーヒーの抽出方法も増えている。このような芸術活動の発展やコーヒーの味わいの方の多様化を背景に、デミタスが盛んに作られたのだといえる。本展では、多彩なデザインのデミタスカップから、デザインの変遷とその背景もたどることができるだろう。
特別展「デミタスカップの愉しみ」
会期:2022年9月17日(土)〜11月27日(日)
会場:八王子市夢美術館
住所:東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子 2階
開館時間:10:00〜19:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜日休館)
観覧料:一般 900円、学生(高校生以上)・65歳以上 450円、中学生以下 無料
【問い合わせ先】
八王子市夢美術館
TEL:042-621-6777