長崎県美術館では、小企画展「前田齊」を、2022年6月8日(水)から8月7日(日)まで開催する。

社会の中で生きる人間の在り方を問う

前田齊(まえだ ひとし)は、社会の中で生きる人間の在り方について問いかける意識のもと、洗練されたデザイン感覚による作品を手がけた作家だ。

1939年、長崎市茂木に生まれた前田は、武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)を卒業したのち、デザイナーとして勤務するかたわら自身の制作を続けていた。活動の転機となったのは、1960年代後半のこと。1967年、第4回国際青年美術家展で大賞・留学賞を受賞してパリに留学し、帰国後の1969年には第10回サンパウロ・ビエンナーレに日本代表として出品するなど、たちどころに広く名を知られるようになったのだ。

前田の作品制作を特徴付けるのが、エアブラシによるなめらかな色面や、フォルムの反復だ。緻密な作業に基づきつつも、手の痕跡は極力排除され、デザイン的に構成された画面において、作家の身体性は希薄化し、どこか空虚な世界が展開されることになる。

実際、前田が画業で一貫して意識してきたのは、社会という枠組みの中で生きる人間という存在のあり方の問題であった。前田の制作手法もまた、個々人の存在が希薄となった社会のありようを強調するものであるかのように捉えられる。そして1980年代以降に手がけられた「MA(間)」や「Chocolate City」などのシリーズにおいては、こうした意識が通底しつつもより広い視点をとり、人間や社会を包摂する「世界」に着目するようになっていった。

小企画展「前田齊」では、《日蝕》や《人間市場》、そして「人型」や「MA」のシリーズなど、長崎県美術館の所蔵作品を中心に、前田の芸術の展開を紹介。大胆な造形感覚と繊細な技法によって生みだされた作品の数々を目にすることができる。

展覧会概要

小企画展「前田齊」
会期：2022年6月8日(水)〜8月7日(日)
会場：長崎県美術館 常設展示室第1・2室
住所：長崎県長崎市出島町2-1
開館時間：10:00〜20:00(最終入場は19:30まで)
休館日：第2・第4月曜日(7月25日(月)は臨時開館)
入場料：一般 420円(340円)、大学生・70歳以上 310円(250円)、小中高生 210円(170円)
※( )内は15名以上の団体料金
※県内在住の小・中学生は無料
※身体障害者手帳などの提示者および介護者1名は無料

【問い合わせ先】
長崎県美術館
TEL：095-833-2110