セイヴソン(Seivson)の2022年春夏コレクションが、2021年9月4日(土)、渋谷のヒカリエホールにて発表された。
台湾出身のヅゥチン シン(Tzu Chin Shen)が手がけるセイヴソンが、日本の公式スケジュールで発表する初のコレクションとなる今季。そのテーマは、“MISTERMISS”──さまざまなかたちの脅威で混沌とした近未来の世界を舞台に、潜入捜査する“名もなき秘密捜査官”の姿だ。
捜査官というテーマゆえだろう、フォーマルやミリタリーのウェアを基調としつつ、ブランドが得意とする解体・再構築的なデザインを展開させてゆく。ミリタリーやフォーマルといっても、それは必ずしも屈強さを意味するものではない。テーラードジャケットは、バストより上を大胆に除いてストラップをあしらうことで、軽快なブラトップスタイルに仕上げた。
また、トレンチコートはスリーブを大胆なフリルに、ウエストから裾にかけては大きくひだをなしつつ膨らむシルエットとし、バックはカットアウトすることで華やかなドレスに。さらに、ボディ部分は再構築的なブラトップのデザインながら、スリーブはナイロンのミリタリーブルゾンのそれを大きく膨らませるところには、かすかに甘い雰囲気すら感じさせる。解体・再構築的なデザインながらも、佇まいは張りつめたように洗練されている。
上述の例に見るように、インナーとアウターの関係を反転させつつ解体・再構築的にデザインするのも特徴的だ。ブラトップはアシンメトリックかつ縦横無尽にカットアウトを施し、多数のピースを重ね合わせ、複雑なレイヤー構造を生みだす。複雑に入り組む再構築的なデザインながらも、そのシルエットは概してタイトであり、カットアウトから覗く素肌はあくまで官能的である。
素材はナイロンをはじめ、光沢を帯びつつ薄く軽やかなファブリックが中心に用いられ、コレクション全体にエレガントかつ軽快な雰囲気を与えている。とりわけ、プリーツを施したシアー素材をふんだんに使い、アシンメトリックに仕立てたワンピースのドラマチックさ。あるいは、パンツにはサイドにシャーリングを施すことで、裾に折り重なったひだが歩みに合わせて揺らめく様子もまた、素材の軽やかさを印象付ける。
カラーは、ブラックやホワイト、ベージュといったニュートラルでベーシックなものを基調とした。なかでもベージュカラーは、ブラトップに用いれば、そのタイトなシルエットと相まってほとんど素肌と溶け合うかのような印象をも与える。加えて、コーディネート全体としても同系色を中心にまとめることで、多数のパーツが揺らめき、衝突し、交錯するそのデザイン自体を強調しているといえるだろう。