ニューヨーク・ファッションウィークに、マンハッタンのロウアーイーストサイドで披露されたY-3(ワイスリー)の2013-14年秋冬コレクション。
ショーのコンセプトには「フューチャー・スリフト(未来の質素)」。「次世代の人々は技術的な要素と伝統的な要素をどのようにミックスするのだろうか」というテーマをイマジネーション豊かに探求した。
過去と未来のバランス感覚に重きを置いた今回。伝統的なヘリンボーン織りの生地に蛍光イエローのステッチでアクセントを施したり、ロング丈のプリーツ入りトラックドレスにPVC素材のケープを組み込んだり、ミリタリースタイルのチュニックの両サイドに付けたファスナー開きからネオンカラーの裏地を見せたりすることで、モダンなルックに仕上がっている。
ウィメンズウエアは、前シーズンに提唱されたミニマムなスタイルを踏襲しつつ、フェミニンなシルエットを強調。明確なショルダーライン、絞ったウェスト、ロング丈で裾にフレアが入ったフォルムなどが披露される一方で、ラッフルを寄せたシックなケープや、ロング丈のボールスカート、オリーブドラブ色のサルエルパンツ、両サイドが広がったコットン製カーディガンなどのドラマティックなボリュームも健在だ。
ディテールをカスタマイズ出来るアイテムもあり、裾をボタンアップ出来るコットン製パーカ、取り外し可能なスカートを重ねたテーラー仕立てのパンツ、取り外し可能なPVC製の装飾が付いたケープやブレザーやドレスが提案された。さらにコレクションを象徴するアイテムとして、膨らんだフォルムが特徴のボールガウン(夜会服)なども登場。山本耀司らしいアヴァンギャルドかつ奇抜なタッチで、観客の目を釘付けにした。
メンズウェアは大胆且つ鮮やかというテーマに沿って、「ウルトラポップ」(アシッドグリーン)、「アルファポップ」(ホットピンク)、「ウォーニング(警告)」(ブライトオレンジ)といった色調をフィーチャー。グログランをあしらったキルティングのブレザーや、抽象的な「Y」字のモチーフをさりげなく取り入れたボタンダウンのシャツと、エレガントなテーラリングが展開された。また、ネオンストライプの贅沢なニットには、ヴィンテージの設計図を思わせる、カムフラージュ柄を再解釈したシャープなパターンのグラフィックプリントをコーディネート。ダブルフェイスのコーティングコットン製リバーシブルシャツや、取り外し可能なPVC製パーツが付いたコートとパンツを中心に、ウィメンズと同様Y-3が重要なテーマに掲げるモジュール性を表現した。
フットウエアはランニング、クロストレーニング、バスケットボールという各カテゴリーの要素を融合させ、ファブリックとスタイルを巧みにミックスした。ウィメンズでは、艶のある分厚い白のソールが付いたベルベット製のハイキングブーツや、異素材をコラージュしたぽっくり風のプラットフォームシューズが登場。メンズでは引き続きマスキュリンでタフという路線を踏襲し、ミリタリースタイルのハイキングブーツや、ハイトップのオックスフォードシューズなどがラインナップした。メンズもウィメンズも、車のタイヤにヒントを得たチューブ状のクッションテクノロジーをフットウエアに搭載。デザインのみならず、機能性も抜群だ。
時間の流れについて、「過去を振り返りながら未来に向かって後ろ向きに歩いて行く」行為だという持論を語る山本耀司。その言葉通り、未来的な演出の中にもノスタルジアが垣間見える、記憶に残るコレクションとなった。
このショーはwww.y-3.com/showを通じて、複数のカメラを用いたマルチアングル方式でライブ配信された。ショーの模様を撮影した動画は2013年9月まで閲覧が可能だ。