アンリアレイジ(ANREALAGE)の2020年春夏コレクションが、2019年9月24日(火)に、フランス・パリにて発表された。
デザイナー森永邦彦は、2019-20年秋冬コレクションから「服」そのものにフォーカスした新しい実験をスタートした。「ディテール」をテーマに服の細部をデフォルメした前シーズンに対して、今シーズンは「アングル(ANGLE)」をコンセプトに据えている。
森永が注目したのは、画像化したデジタルな洋服のイメージが、カメラアングルによってその形を変容させる点。立体的な3Dの洋服を、平面的な2Dの画像イメージに変え、それをハイアングル、ローアングル、サイドアングルといった視点から見つめ直すことで、新しい洋服の構造を模索している。
ステージに登場するのは、オックスフォードシャツやカレッジTシャツなど誰もが目にしたことのあるベーシックウェア。ただし、様々なアングルで捉えたその洋服たちは、斬新なシルエットに再構築されている。
エンブレム付きのブレザーを例にとると、ハイアングルから見たピースは、肩幅やアームホールをオーバーサイズに、ウエストや袖口をスリムに仕立てることで、逆三角形のフォルムへと導いている。
サイドアングルから捉えたものは、右袖が前身頃に、左袖が後ろ身頃に移動したかのようなアシンメトリーなシルエットが印象的。
ローアングルから再構築したピースは、首回りを極端に小さく設計し、裾に向けて緩やかに広がっていくAラインシルエットに仕上げた。襟やボタンといった細部にいたるディテールまでデフォルメされている。
また、身に纏うと立体的な“洋服”であることに間違いはないのだが、平面的なイメージからパターンを起こしているため、折り畳むとフラットな“和服”のようになる点も面白い。トレンチコートのショルダー部分に注目すると、本来ならば肩に沿うようなパターンが用いられるはずが、森永が仕立てた服は平置きした時に真っ平らになる設計が施されている。
バッグなどの小物においてもそれは顕著で、キャンバストートやキルトレザーのハンドバッグなど通常厚みのあるバッグが、薄いフラットなバッグに姿を変えて登場。遠近法を巧みに使った“だまし絵”のようなビジュアルとなっており、ウェアに負けないほどの存在感を放っていた。
ショーの演出にも、アンリアレイジらしい感性が光る。1つのベーシックウェアをベースとした3体のルックを同時にランウェイに登場させることで、それぞれの違いを浮き彫りにしたのだ。