ディズニー&ピクサー映画『インサイド・ヘッド2』が、2024年8月1日(木)に公開される。監督のケルシー・マンと、プロデューサーのマーク・ニールセンにインタビューを実施した。
映画『インサイド・ヘッド2』は、2015年にピクサー20周年記念作品として公開され、第88回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した『インサイド・ヘッド』の続編となる作品。主人公の少女・ライリーが高校入学という転機を迎え、頭の中で彼女の幸せを見守る「ヨロコビ」や「カナシミ」といった5つの感情たちの前に、新たな4つの大人の感情「シンパイ」「イイナー」「ダリィ」「ハズカシ」が現れ、感情の嵐が巻き起こる姿を描く。
『インサイド・ヘッド2』では、思春期を迎えちょっぴり大人になったライリーの姿が描かれています。まずは本作のテーマを教えていただけますか。
ケルシー:この映画は、「自分自身を受け入れること」をテーマにしています。誰しも愛されるために完璧である必要はないはず。物語の中には、“ダメな部分も含めて自分を愛してあげる”ためのヒントを散りばめました。
「自分自身を受け入れる」というテーマを描くにあたり、“思春期”を選んだのはなぜでしょう?
ケルシー:自分の人生を振り返った時に、「僕は十分じゃない」という気持ちが一番大きかったのが10代半ばだったんです。10代というと、今まで周りにお世話してもらっていたのが、自分で自分の世話をしなければならなくなる時期。自分自身を客観視できるようになると同時に、他人が自分をどう見ているのかがすごく気になるタイミングでもあります。それが行き過ぎると、小さな失敗で落ち込んだり、周りと比べて不安になったり、自分が心底嫌いになったり…自分にすごく厳しくなってしまうわけです。
でも大人になった今考えると、当時悩んでいたことが“宝物”のように思える瞬間がある。だから、嫌な感情もまるごと抱きしめて、もうちょっと自分に優しくしてあげましょう、ということを伝えたかったんです。
本作には、リアルな“思春期あるある”がたくさん詰め込まれていますよね。10代ならではのエピソードはどのように集められたのですか?
ケルシー:年齢や性別に関係なく共感してもらえる映画にしたかったので、いろんな人のいろんな経験を聞きました。まずは自分の“遠い昔”の経験を振り返ってみて、次にストーリーチームの女性たちに学生時代のことを思い出してもらった。でもどうしても、13歳当時の視点が欲しいよねという話になり、10代の人にも話を聞いてみました。
マーク:13歳から16歳の女の子9人を集めて、3年間にわたって制作段階のシーンを全部見てもらったんです。そして、ライリーとその周りの女の子たちの関係は共感できるのか、毎回ミーティングをしました。私たちはそのグループを“ライリーズクルー”と名付けていたのですが、彼女たちのフィードバックがあったからこそ、思春期のリアルを追求できたんじゃないかなと思います。
『インサイド・ヘッド2』も含め、ディズニー/ピクサーの作品は、文化や言葉を越えて世界中の人たちに愛されていますよね。世界中に響く映画を作るというのは難しくはないですか。
マーク:イエス。(笑) 本当に難しいです。
作っている私たち、そして観客の方にも共感してもらえるような映画を作るのには、平均して4年ほど苦闘します。その間にも、何度も何度も作り直しをするのですが、大体最初の段階はうまくいきません。今回の『インサイド・ヘッド2』も、はじめはかなりひどかった。
ケルシー:ひどいなんてもんじゃない、最悪だったよ。(笑)
マーク:(笑)。 それをまた練って、壊して、練って、壊して…。ピクサーには才能に溢れる方々がたくさんいるのですが、みんなで努力して、もがいて、ものすごい時間と労力をかけて、人間として根っこのレベルで響くような、それでいて楽しく娯楽的なアニメーション作品を作っているわけです。
『インサイド・ヘッド2』で“ボツ”になったストーリーが気になります。
マーク:今回の映画は、「ホッケー」がライリーの重要なアイデンティティとなっているのですが、1番最初のバージョンでは、そもそもライリーはホッケーをやっていませんでした。
でも、友人グループとただやりとりしているだけのファーストバージョンを観た時、なんだか物足りなく感じて。スポーツを小さい時からやっていると、自分なりの仲間ができて、10代になるとその仲間を超えて新しいチームに入るということも起きる。そのほうがライリーの成長をドラマティックに描けるのでは、となり、ホッケーの軸を採用する流れになりました。
ケルシー:10代の時に感じるプレッシャーをどう描こうかと考えた時に、学芸会のようなものでプレッシャーを感じるのはどうか?という案もあったよね。それもボツになりました。(笑)
いろいろな紆余曲折があったのですね。
ケルシー:はい。常により良いアイデアを出そうとしているので、どうしてもカットしなければならない部分が出てきてしまうんです。
ディズニー/ピクサーの作品は、ピュアな気持ちを引き出してくれるような、心温まるストーリーが魅力だと思います。ストーリーを作る上で大切にしていることや、テーマにしていることはありますか。
マーク:映画を作る際は、観客の人にどんな気持ちになってほしいか、ということを常に大切にしています。
というのも、映画作家としての私の仕事は、“観客の感情を呼び起こす”ことだからです。もし映画を観た時に、何の感情も感じなかったとしたら、その映画があまりうまく機能していないということ。ですからある意味、私は皆さんの頭の中にある感情のパネルを操作しようとしているわけです。もちろんいい意味でね。(笑)
ところでお2人は、日本のアニメをご覧になることはありますか?
マーク:もちろん!大好きです。
ケルシー:僕もよく観ますよ。アニメーションの作り手なら、誰もがインスパイアされずにはいられないと思う。
実は私の子どもたちが日本のアニメにめちゃくちゃハマっていて、私が知らなかった作品をどんどん紹介してくれるんです。最近だと『呪術廻戦』や『ヴィンランド・サガ』が面白かったな。あとはもちろん、ジブリ作品も大好きです。
アメリカではアニメというと子ども向けのものと捉えられがちなのですが、日本のアニメは大人にもすごく真面目に受けとられているのが魅力だと思います。私たちも、子どもだけでなく、あらゆる人に楽しんでもらえる作品を作ろうとしているので、そこはまさに日本のアニメとピクサーの共通点なのかもしれません。
日本のアニメ文化で育ってきた人の中には、ディズニー/ピクサーで働きたいと思っている人も多くいると思います。そういった人たちに、何かアドバイスはありますか?
マーク:ピクサーで働いている人たちに共通しているのは、自分が関わっているアニメーション、フィルムメイキングに対して、すごく情熱を持っているということです。自分が関わるからにはベストなものを作りたい、心血を注ぎたいという風に思って、毎日描いて、毎日仕事をしている。つまり、すごくハードワーカーなんです。
私たちはそういう資質を持っている人を求めているし、日本の方の中にもそういった方がたくさんいらっしゃると思います。
映画『インサイド・ヘッド2』
公開日:2024年8月1日(木)
監督:ケルシー・マン
脚本:メグ・レフォヴ
制作:マーク・ニールセン
日本語版声優:大竹しのぶ、多部未華子、横溝菜帆、村上、小清水亜美、小松由佳、落合弘治、浦山迅、花澤香菜、坂本真綾、武内駿輔、花江夏樹、中村悠一
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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