映画『帰ってきた あぶない刑事』でW主演を務める舘ひろしと柴田恭兵にインタビュー。
1986年のテレビドラマ放映開始以降、社会現象を巻き起こすほどの人気を博した「あぶない刑事」シリーズが、8年ぶりにスクリーンに登場。シリーズ8本目となる映画『帰ってきた あぶない刑事』では、タカことダンディー鷹山と、ユージことセクシー大下の“最強バディ”が、探偵として横浜に帰ってくる。
探偵事務所へ現れた依頼人第一号は、2人の娘かもしれない女性・彩夏。母の夏子を探してほしいという依頼を引き受け、捜査をしていく中で起こる不審な殺人事件や、お馴染みのチェイニーズマフィアや謎の美女との出会いなど、あぶない香りに巻き込まれていくー。
最初に、8年ぶりに「あぶない刑事」シリーズが帰ってくると聞いた時の率直な気持ちを教えてください。
舘 :僕はオファーをいただいて、文句なしに嬉しかったです。前作の『さらば あぶない刑事』で終わるつもりだったんだけれども、体力的にもう1回できるかな…と思う部分があって、ぜひやりたいと即答しました!
柴田 :僕はもういいじゃないか、っていつも言うんです。「さらば」って言いながらまた帰ってくるの?って(笑)。そしたら今回は、2人の娘かもしれない女性が現れる話になりそうだと聞いて、面白いんじゃないかと思いました。まぁ、基本的には舘さんが「全員集合!」って言ったら、みんな集まるんですけどね(笑)。
久しぶりにタカとユージとして再会されて、すんなり戻れるものなのですか?
舘 :撮影現場で恭サマに会えば、一瞬で戻れますね。前作が8年前だろうが、何を考えることもなく、38年前にすぐ戻る。
柴田:だって、役作りとかないんですもん。舘さんはタカで、僕はユージ。台本に何も書かれていない、まっさらなところから、自分たちでタカとユージのイメージを作り上げて…あっという間に40年近く経ちましたから。ユージに自分が入り込んでよし!っていう感じではないんですよね。
舘:僕の人生の半分「あぶない刑事」やってんだもん(笑)。
すごすぎます…!そんな昭和から平成、令和と続く「あぶない刑事」シリーズですが、映画『帰ってきた あぶない刑事』の見どころはなんでしょう?
柴田:タカとユージの今まで見られなかった一面を知れるところですかね。彼らのプライベートや心情は、あまり描かれてこなかったですから。
舘:全体的には、制作陣がガラッと変わって、全く新しい“あぶ刑事”になっているんです。たとえば、監督も初めて「あぶない刑事」シリーズに関わる方。カメラワークも全然違うので、新しい映像が撮れていてよかったです。
シリーズの醍醐味であるバイクシーンも、全く異なる撮り方だったのですか?
舘:そうですね、2日か3日かけて撮ったんですよ。監督と走るコースから演出、撮り方まで相談して、一緒に作っていった感じです。
柴田:僕は、今回のバイクシーンが今までで1番かっこいいと思います!
乞うご期待ですね!今作から出演するヒロイン・彩夏を演じた土屋太鳳さんの印象はいかがでした?
柴田 :太鳳さんはとってもチャーミングで、あったかい部分もあって、お芝居も本当にしっかりされてる方だなと。
舘:しっかりしてるよね。
柴田:さらに体のキレがすごくいい!アクションも走りもかっこよかったです。だから、絶対ユージの娘だなと思いながらやってる時もあれば、でももしかしたらタカの娘かもしれない…って思ったりもしながらお芝居をしてました(笑)。
舘 :僕は太鳳さんとの絡みは少ない中で、僕自身子供がいないから、子供に対する接し方自体あんまりよくわかってなくて。微妙な距離感があったかもしれない。
柴田 :そのぎこちなさがなんかあったかいんですよね。
舘:彩夏に対するタカとユージの距離感の違いにも注目してみてください。
次に、時代を超え、38年もの間愛され続ける「あぶない刑事」シリーズについて掘り下げていく。
お2人の大きな俳優人生の中で、「あぶない刑事」シリーズはどのような意味を持つ作品ですか?
舘 :僕は、俳優人生でこういう“代表作”と言える作品を持てたことが、すごく幸運だったと思う。一人の俳優として、とても強くしていただきましたね。
柴田 :僕も舘さんのおっしゃる通り。でも最初は、 “柴田恭兵はユージだけじゃないぞ”って思いもありました。今こうして振り返ってみると、「あぶない刑事」の素敵な仲間、舘さんと出会えたことは、自分が思っているよりものすごく大きい意味のあるものだと実感しています。“あぶ刑事”がきっかけで、僕が出ている他の作品を見てくださる方もいっぱいいらっしゃるし。
舘 :この歳になると、なんか実家みたいな存在だよね(笑)。安心して帰ってこられる作品です。
柴田:そうそう。「あぶない刑事」をやって、3~4年空いて、その間にお互いいろんなことを経験して、刺激をもらって。また帰ってきて、舘さんと会ったときに新鮮な気持ちで向き合うことができました。
素晴らしい出会いですよね。それでは、38年前に「あぶない刑事」がヒットする“予感”のようなものは、なにか感じていらっしゃいました?
柴田:全くないです(笑)。
舘:僕も全くなかったな。実は、僕はもっとハードボイルドで真面目な“人情ドラマ”が撮りたかった。でも黒澤満(※)監督に否定されて、恭サマは見たことがないような軽い芝居をするし…最初は納得していなかったんです。
※黒澤満:「あぶない刑事」シリーズのプロデューサー・監督。映画・TVドラマ・Vシネマなど日本のエンタメ作品の礎を築き、“映画の父”とも言われている。主なプロデューサー作は、松田優作主演の「最も危険な遊戯」、『Wの悲劇』、『北のカナリアたち』、舘ひろし主演の『終わった人』など、多くの映画作品を手掛けた。2018年没。
柴田:確かに、撮影開始から少し経った頃、舘さんが撮影中に「ちょっとごめん」ってバスに戻ったときがありました。黒澤さんと2人で行ったら、「どうもちょっとかっこ悪い感じがする」って言うんです。普通はそんなこと言いませんよ、絶対。でも舘さんは、正直に「なんか違う感じがする」って伝えてくれた。そのときに改めて、舘さんってなんて素敵な人なんだろう、この人とだったら素敵なものができるって心から思いました。
きちんと納得していない状況から、どのように気持ちを切り替えて作品に望まれましたか?
舘:なんとなく、自分の中で恭サマの芝居が腑に落ちてなかったんですけど…何ヶ月かして、それは僕の“柴田恭兵という俳優に対する嫉妬”だったことに気付きました。僕ができないような芝居をサッとこなして、すごく面白くて。そのことに気づいてからは、この人がきっと作品を面白くすると確信したし、僕も「あぶない刑事」シリーズの土台をちゃんと作っていく気持ちになった。
柴田:たとえば、一緒に走ると僕の方が速いから、一緒に走るシーンはもう撮らずに、舘さんと僕がすぐ二手に分かれたり。説明台詞については、僕もちゃんと言いますけど、舘さんがいつもかっこよくて、僕が茶化すスタイルは飽きられちゃうから、舘さんも時々コミカルに演じてもらったりしました。1作目から、本当に舘さんと面白いものを作りたいし、作れると思ったんです。
舘:要するに「あぶない刑事」のフォーマットは、やっぱり柴田恭兵ですね。
柴田:もう、“出会い”に尽きますよ。舘さんをはじめ、他の役者や衣装さん、照明さん、ハードボイルドが得意な監督さんもコメディチックに頑張ってくれた。演者とスタッフ全員が馬鹿馬鹿しいものを本気で撮ろうっていう空気になったことが、もしかしたらヒットに繋がったのかもしれない。
舘:そうですね(笑)。馬鹿馬鹿しいものをちゃんと撮ったんですよ。