メゾン マルジェラ(Maison Margiela)の2024年春夏「Co-Ed」コレクションが発表された。
今季のメゾン マルジェラは、2022年秋冬「アーティザナル」コレクションで発表され、2023年秋冬「Co-Ed」コレクションで引き継がれた「シネマ・インフェルノ(Cinema Inferno)」の物語を展開するコレクション。物語の主人公カウントとヘンの両親が出会うこととなる、大西洋を渡ってアメリカへと向かう船旅を着想源とした。
今季の舞台が、これまでの「シネマ・インフェルノ」の主人公カウントとヘンの時代から、その両親の時代へと遡ったことを反映するかのように、コレクションは衣服における時間に対して、鋭敏な感覚を示している。幾重にもドレープを織りなすドレスやテーラリングといったクラシカルな装いを基調としつつ、これらは半ば解体され、船旅でトランクに押し込められた衣服の常として、シワを帯びた表情が付されることになる。
船旅の時間を文字通りに刻印するこれら衣服の襞は、いわば凍結されることになる。たとえば、ドレスやビスチェを取り上げよう。解体されて装い内部の構造を露わにされ、シワを帯びたファブリックには、ラミネート加工を施すことで、いわば船旅の時間を外部から切り離している。こうして、衣服にうごめく時間の襞は、PVC素材の中に閉じ込められ、永遠化することになる。
そもそも衣服こそ、すぐれて身体の時間を形象化するものではなかろうか。つまり衣服は、身体にまとわれることによって着用者の身振りとじかに接し、それを自らへと折り畳んでゆく。裾のヘムラインにつくシワ感、些か前屈みに仕立てられたジャケットのショルダーなど、確固たるフォルムを保つであろうクラシカルな装いにも、確かに身体の時間が息づく。
ところで、このコレクションがある男性と女性の出会いの物語であるのならば、いわゆる男性服、女性服の要素をひとつのウェアへと混交し、新鮮なフォルムを生みだすことは、自然な響き合いだといえるだろう──それはそもそも、このメゾンの特質であることはもちろんだが──。一見クラシカルなロングコートは、装飾的なドレスを思わせる膨らみをバックに組み合わせるほか、テーラードジャケットは前後を反転し、ドレスへと変装した。