2018年に行った来日公演「キュリオス」にも注目。1984年の創設以来35作目となる演目で、創設30周年を記念して制作された、シルク・ドゥ・ソレイユにとっても特別な作品だ。「好奇心」「骨董品」という意味を持つ「キュリオス」をタイトルに掲げ、19世紀の産業革命の時代を彷彿させながらも、近未来的な雰囲気を持つ独特の舞台で、主人公・シーカーが活躍するストーリーとなっている。
また2023年、5年ぶりの日本上陸作となった「ダイハツ アレグリア-新たなる光-」にも触れておきたい。約19年ものあいだ世界255都市で上演されており、今回、大胆なクリエイティブの変更により衣装とセットデザインを一新し、アクロバットもより力強く進化し生まれ変わった。
スペイン語で“喜び”を意味する「アレグリア」は、シルク・ドゥ・ソレイユの復活にふさわしい“希望に満ち溢れた歓喜の物語”となっている。2月に始まった東京公演は52万人が来場し6月に幕を閉じたが、7月14日(金)より大阪公演がスタートするため、気になる人は要チェックだ。
ではなぜ、これほどまでに人々はシルク・ドゥ・ソレイユに熱狂するのか。ここでは、シルク・ドゥ・ソレイユの“なにがすごいのか?”という魅力を昔ながらのサーカス、すなわち伝統的なサーカスと比較し探っていく。
“サーカスと言えば?”。この質問をされたほとんどの人は、ゾウやライオンなど動物たちによる芸、大きなテントなどを思い浮かべるだろう。
古来よりサーカスという場には、空中ブランコといった空中でのパフォーマンスや地上曲芸、ピエロによる道化芸、動物曲芸などと合わせて、珍しい身体的特徴を持った人々が登場することもあった。
シルク・ドゥ・ソレイユは、伝統的なサーカスの演目を受け継ぎつつも、動物は一切登場せず、人間の能力の限界に挑むかのように空中や地上でのアクロバットをより進化させ、大きなテント内に広がる空間は、高い芸術性を孕み発展した。総合的に見ても、伝統的なサーカスとは一線を画し、一種のアートとして確立されたと言えるだろう。
身体的に優れた特徴を兼ね備えたアーティストは、シルク・ドゥ・ソレイユに多数出演しており、伝統的なサーカスの系譜を継いでいると考えられる。ステージ上や空中で繰り広げられるアクロバットを行うアーティストは、その多くが新体操、トランポリン、タンブリング、シンクロナイズドスイミングなど、オリンピック出場者も含むアスリート出身者だ。
アーティストは、自身の出身分野で鍛えた技を駆使し、ショーを盛り上げていく。たとえば新体操出身者は、フラフープのテクニックや柔軟性を活かしたサーカスアクトなどを行う。
シルク・ドゥ・ソレイユには世界70か国から集まった1,400人のアーティストが所属し、それぞれのショーには50人から100人の演者が出演。中には日本人のアーティストも存在する。スポーツ分野出身者以外では、ダンス、音楽、ストリートアートなど、様々な芸術的背景を持つ人々が、キャストとして集結している。
このように、各分野でトップレベルの才能を持ち合わせたアーティストたちにより、高い芸術性が生み出されているのである。