アニメ映画『金の国 水の国』が、2023年1月27日(金)に公開される。その原作者である漫画家・岩本ナオにインタビューを実施した。
原作者の岩本ナオは、「このマンガがすごい!(オンナ編)」において、2017年に『金の国 水の国』で、2018年に『マロニエ王国の七人の騎士』で、堂々の1位に輝いた人気漫画家。異なる作品で2連覇を達成したのは、「このマンガがすごい!」において史上初めてとなる。
今回待望のアニメ映画化を果たす『金の国 水の国』は、岩本ナオが描く心あたたまるストーリーや唯一無二の世界観で、漫画好きはもちろん、各界から絶賛される人気作品だ。
物語の舞台は、ある時代のどこかにある隣り合う仲の悪い2つの国。<金の国>の王女・サーラと<水の国>の青年・ナランバヤルが偶然出会い、敵国ながら国の未来を守るために“偽りの夫婦”を演じることに。次第に惹かれ合っていく2人の恋は、やがて国をも変えていく...。
本記事では、漫画家・岩本ナオに『金の国 水の国』の制作秘話や映画化に対する想いから、自身の漫画人生、物語づくりへのこだわりまで、たっぷりと話を伺った。
まず、原作『金の国 水の国』を描こうと思ったきっかけを教えてください。
前の連載が終わった後、実は1年間お休みをいただいていたんですよね。そろそろ再開するかとなった時に、まずはリハビリも兼ねて描きやすい読み切りから始ようと思ったことがきっかけです。過去にも読み切りのファンタジーを描いたこともあったので、もう一度トライしてみようかな、という軽い気持ちでした。
そこから生まれた『金の国 水の国』は、異なる国に住む王女・サーラと青年ナランバヤルが主人公です。ファンタジー作品といえば、華やかなイメージがありますが、“あえて普通の見た目”のキャラクター設定にした理由は何でしょう?
『金の国 水の国』は読み切りですぐ終わると思っていたので、1回くらい“美男美女ではない”主人公のファンタジー作品も描いてみたいと思ったからです(笑)自分と遠くかけ離れた存在というより、むしろ周りにいそうな、親しみのあるキャラクターをあえて描いてみました。
読者さんは女性が多いと思うので、まず<金の国>の王女・サーラは、皆さんも友達になりたいと思ってもらえるような、おっとりして優しい子に。なんか昔バイト先にいた、やたらモテる子みたいな人物像を勝手に思い浮かべました(笑)
一方、<水の国>の青年・ナランバヤルは、“すごいイケメン!”ってわけじゃないけど、女の子が好きになりそうなキャラクターを意識しています。普段は口が達者なひょうひょうとしたお調子者だけど、実は賢くて家族思い…みたいな、そんなギャップがあるキャラクター像をイメージしました。
主人公たちを固める個性豊かな人物たちも印象的です。
自由度の高いキャラクターを描けるのは、ファンタジー作品の醍醐味だと思います。ディズニーのアニメとか、子供が見るアニメの中でも、線自体は凄くシンプルなのに、滅茶苦茶強い…!みたいなキャラクターって、時々出てくるじゃないですか。『金の国 水の国』の中でいうと、謎に包まれたライララさんに、そんな役割を加えてみたり。描いていて凄く楽しかったです。
個性的な登場人物と相まってその独特なワード使いやリアクションなど、ところどころに岩本先生のユーモアが取り入れられているように感じました。こういった要素も意識されている部分なのでしょうか。
そうですね。とにかくエンタメにしたいので、できるだけ読者の方が最後まで楽しく読めるように意識しています。箸休めではないんですけど、どこかクスっと笑えるような、ひと息つけるところが随所にあったらいいなって。
『金の国 水の国』で全く異なる雰囲気を持つ2つの国の世界観も、物語を彩る大切な要素のひとつです。両国の設定にあたって参考にされた国や作品はありますか。
読み切り作品だからと、結構適当に始めてしまったんですけど(笑)、ひとつの国というより、いろんな国や地域のカルチャーをミックスして作り上げたイメージです。
まず<金の国>(原作ではA国)は、ディズニー作品の『アラジン』に出てくるような、とにかく煌びやかでアラビアンな世界をモチーフにしています。そのイメージにあった、トルコやイラン、エジプトなどの建築物も参考にしています。
一方、<水の国>(原作ではB国)は<金の国>とは対象的な世界を描きたくて。色々と資料を集めるなかで、チベットやモンゴルなどのアジア圏の地域をミックスして、水の国の世界観を作り上げました。