リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)の2022年春夏コレクションが発表された。
今季テーマに掲げたのは「Gassho - Hidden Archives - 」。着想源となったのは、デザイナー山縣のルーツであり、日本の歴史上様々な外来文化を受容してきた「長崎」の地だ。
ホワイトとブラックの2色のみで彩られた、シンプルなルック。だがよく見てみると、1つのボディの中に相反する文化を組み込んでいるのが分かる。祝祭ムード漂う花冠やチャーチスモック風シャツなど西洋的なモチーフに、和服を思わせるノーカラージャケットを合わせたコーディネートがその好例だ。
コレクション全体に漂うナチュラルな雰囲気は、和紙素材の優しい風合いによるものだろう。フロントに10個のボタンを並べたヘンリーネックシャツやドローコードを備えたプルオーバーは和紙100%の生地で仕立てられたもので、和紙特有のパリッとした質感や温かみを感じることができる。
実はこの和紙素材、今季のテーマである「Hidden Archives(隠されたメッセージ)」の鍵を握る大切な要素。というのも、今季山縣は、和紙とそれ以外の素材との“還元スピードの差異”に注目し、実際に“服の中”に言葉や絵の刺繍モチーフを隠したジャケットを作り出したからだ。
着ている本人ですら見えない衣服の内部に施された刺繍のメッセージには、長崎県の五島列島・小値賀島に住む子供たちの“夢”、大人の“想い”、戦争を経験した高齢者の“願い”が描かれているのだそう。土に埋めると、和紙の部分だけが還元し、生分解されない素材の刺繍メッセージだけが未来に残るようになっている。