コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)が発表した2014年春夏コレクション。川久保玲は「新しいものをつくるにあたって、服作りはさておいて、服ではないものを作りました」と述べている。
現代アートかオブジェのように、その独創性に富んだ立体的なフォルムは、いつにも増してアヴァンギャルドな印象を与える。すでにそのビジュアルを目にした人々が口々に言うように、「わからない」、「理解できない」。実にその通りだと思う。しかし、何か新しいことをするために"服を作る"という概念からの脱却を図った今回のコレクションによって、デザイナー川久保が「服」という物に改めて疑問を投げかけていることは確かだ。ファッション界において確固たる地位と名声を得ているにも関わらず、彼女の探究心は枯れることを知らない。
本来なら紙から作られたその生地や、フレアなシルエットが柔らかな魅力を持つはずのドレスも、あえて建築物のような骨組みを上からかぶせている。また、別のルックでは、ハーネスで腕が押さえつけられており、どうも今季のコム デ ギャルソンを着ることで自由や心地よさを得るのは許されないようだ。特に、その試みは「腕」にフォーカスされているように思う。縛られたり、袖口が設けられていなかったり、あっても片腕だけであったり。ありとあらゆる創造物を生み出す、人間の2本の腕の自由を奪うことは、実に示唆的だ。
服とはかけ離れた要素が多々盛り込まれていることも特徴的。フリルいっぱいのドレスには、体の真正面で巨大なテディベアが主張。その個性的な見た目とは裏腹に、ピンク・フリル・花柄・くまさん。女の子の"好き"が詰め込まれている。そして、ショーの形式も独特。音楽や演出を一体一体変えることで、服それぞれを単体で見せるという手法を取った。