香川：僕は杉咲さんが10代の時に「MOZU」シリーズで親子として共演していますが、その時から彼女の中には何か“黒い部分”がくすぶっていて、自分の中にしっかりダークサイドを持っていた。今回また共演してみて、その“悪のスパイス”のパワーが杉咲さん自身のキャラクターといい配分になっていて「よくぞここまで成長したな」と思いました。

杉咲さんは自分のことを「私、臆病なんです」と言っていましたが、だからこその“窮鼠猫を嚙む”感じと言いますか、どこかご自身の内向的な部分がブレーキをかけつつ、カウンターとして悪の胡椒をパッと振りかけるような感じがあります。このまま突き進んでいってほしいと思います。

杉咲：香川さんには以前共演した際に色々と相談させていただいたことがあって。その時に「たとえ嫌われたとしても、いい作品にするために自分がどこまでやれるかが大事なんだよ」とアドバイスをくださったことが今でも心の励みになっています。現場に立っていると、どうしても自分のことを守りたくなってしまうような瞬間があるのですが、そんな時に香川さんの言葉を思い出して。今まで以上にまっすぐ演技に向き合うことができるようになったきっかけをくださいました。

“99.9％不可能“からの逆転エピソード

ストーリーのテーマとかけて、 “99.9％不可能”だと思っていたけれども“0.1％”のところで逆転できた実体験のエピソードを教えてください。

杉咲：私は運動が苦手で。続かないと思っていたのですが、最近ウォーキングマシーンを買ったら「家にあるとちゃんと続けられるんだ！」ということに気付きました(笑)。

松本：でも外には行かないんだね(笑)！

杉咲：(笑)。なかなか1人だと心細くて外に出られないんですけど、家にマシンがあったらやりたい時にいつでもできるな、と。

香川：僕は料理。後片付けのこととかも気になるし、今まで料理は絶対に一生できないと思っていたのですが、外出の機会が減っていざやり出してみたらドはまりしまして！すっかりできるようになりました。

松本：撮影期間中に油淋鶏を作ってくれましたよね？おいしかったです。

香川：油淋鶏食べていただきましたよね、1回ね。唐揚げを作ろうとして失敗したんだよね。“二度揚げ”をやってみたら結局べちゃべちゃになってしまいました。

松本：その失敗した唐揚げにアレンジを加えて油淋鶏にするって香川さんが言っていて。最初は「マジか！油淋鶏は難しいのでは」と思ったのですが、食べてみたらとてもおいしくてびっくりしましたよ！

香川： 0.1％も可能性がなかったところから、いい料理人になりました(笑)！

では、松本さんが“99.9％不可能”だと思った瞬間は？

松本：僕は「絶対に不可能だ」と思う瞬間ってものすごくヒリヒリするタイプなんですよ。それこそ今回の撮影でも、自分を“99.9%不可能なライン”まで追い込みつつ「ナメんな！」という反骨心でなんとか乗り切る、という瞬間が割とあったと思います。

例えば今回はどのような時に“ヒリヒリ”しましたか？

松本：僕から提案してセリフが変更になった時ですね。いつも撮影前に一通り演技の流れをシミュレーションしてはいるのですが、実際に現場に立ってみると「このセリフは刺さり切っていないな」と思うことがよくあって。

今回もセリフを変えた方がいいと思った場面があったので、皆さんにご納得いただいた上で新しいセリフにしていただいたのですが、よく考えると自分の首を絞めているだけなんですよね。セリフを覚え直さなければいけないのは自分だし、僕がセリフをしゃべれないとどんどん現場が押してしまう。その“ヒリヒリ感”を感じながら演じていました。

香川：スペシャルドラマでは、深山がたくさん話す法廷シーンがあるのですが、当初決まっていたセリフとは似ても似つかないセリフに変わっています。松本さんがずっとプロデューサーと2人で話し合いをしていて、その結果、違うセリフに変わっていました。本当に松本さんは自分で自分の首をきつく締めていらっしゃるなあ、と思いました(笑)。

松本：(笑)

香川：でも、出来上がったばかりのセリフを松本さんが30分で覚えて全部喋りきっていたのを見た時は「すごいな、深山が乗り移っているんだな」と思いましたね。

松本：あの時は本当にギリギリセーフでした。ドキドキしましたね。

香川：スペシャルドラマの見所の1つになっていると思います。ぜひ注目してみてください。

【映画概要】
『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』
公開日：2021年12月30日(木)
出演：松本潤、香川照之、杉咲花、片桐仁、マギー、馬場園梓、馬場徹、映美くらら、池田貴史、岸井ゆきの、西島秀俊、道枝駿佑、蒔田彩珠、榮倉奈々、木村文乃、青木崇高、高橋克実、石橋蓮司、奥田瑛二、笑福亭鶴瓶、岸部一徳、R-指定
監督：木村ひさし
企画：瀬戸口克陽
エグゼクティブプロデューサー：平野隆
プロデューサー：東仲恵吾、辻本珠子
配給：松竹

〈あらすじ〉
超型破りな弁護士・深山(松本潤)、敏腕弁護士・佐田(香川照之)、三代目ヒロインの新米弁護士・穂乃果(杉咲花)の元に15年前に起きた毒物ワイン殺人事件に関する依頼が舞い込んでくる。その犯人とされた人物は、死刑判決の確定後、無実を訴えながらも獄中で死
亡しており真相は葬られた。その事件には、謎の弁護士・南雲(西島秀俊)とその娘エリ(蒔田彩珠)が関わっていた！深山たちは、事件が起きた村で出会った青年・守(道枝駿佑)の協力を得ながら、事件を徹底的に調べていくことに。しかし、巧妙に仕掛けられた罠によって、まさかの冤罪を生む事態に、事実だけを求め続けてきた深山に初めて迷いが生まれる。最大のピンチに見舞われながらも、果たして深山たちは0.1%の事実にたどり着くことができるのか。

■スペシャルドラマ
「99.9 -刑事専門弁護士- 完全新作SP新たな出会い篇〜映画公開前夜祭〜」(TBS)
放送日：2021年12月29日(水)21:00～23:27 2時間半スペシャル