ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)は、2022年春夏ウィメンズコレクションを発表した。
今季のコレクションで表現されているのは、自由な日常が戻ってきたことへの歓喜と、喜びの共有。感情を爆発させるかのごとく奔放かつ大胆に駆け巡る、高揚感や躍動感を鮮やかな色とともにデザインに落とし込んでいる。象徴的な着想源は、インドの「ホーリー祭」。誰彼かまわずにカラーパウダーや水をかけ合って笑い合い、自由を楽しむお祭りの賑やかな雰囲気を描き出している。
強い色彩同士がぶつかり、徐々に溶け出して混ざっていくかのようなヴィヴィッドな色使いが印象的だ。細やかな糸のフリンジを無数にあしらったドレスは、フリンジのオレンジやターコイズブルーといったカラーが、ファジーなイエローやグリーン、オレンジといった色彩と共鳴。布地のしなやかな質感とフリンジの動きも相まって、軽快さを見せている。また、地層を作っていくかのように様々な色のフリンジを重ねたドレスは、身体の動きに連動して、それぞれの色が跳ねていく。
加えて、滲んだ色彩が広がり、他の色に浸食していくかのようなドレスやチェスターコート、パンツはまさにカラーパウダーや色水が染み込んでいくかのような表情に。さらに、花のピクセル画像を拡大し輪郭がかすむまで抽象化したジャケット、ネオンの中を足早に通り過ぎた時のような色彩を落とし込んだジャケット、ドレスなども登場。多彩な色が共存し凝縮され、揺らめき動く様子は、人々が寄り集まる祝祭の喧噪とリンクする。
大がかりな祝祭を構成しているのが無数の人々であるように、華やかな世界観を生み出すのは繊細で緻密な手仕事だ。デニムジャケットには、まるで肩に降り注いだかのようにビジューを散りばめた。ブラックのトップスやパンツには、大きさや色の異なる艶やかなパールをあしらい、スペイシーな輝きをプラス。不均一に色が滲み色の境目が曖昧になったドレスには、あえて規則的にパールを並べていくことで、より一層混沌とした佇まいを演出する。
また、手縫いのスモッキングによる彫刻的なフォルムも目を引いた。袖にダイナミックなボリュームを持たせたドレスは、身頃から裾にかけて細く仕立てることでなだらかな緩急をつけ、分量感の対比を際立たせている。その他、たっぷりと生地を使用し、うねるようなギャザーやドレープによって立体的なシルエットを構築したドレスやコート、スカートが展開された。
一方で、身体にフィットする仕立てのピースはボディラインを強調し、身体そのものの造形の美しさを浮き彫りにする。タイトなシルエットに仕上げたマルチカラーのジャケットは、袖口や襟、前合わせの部分に曲線的なうねりや服地の動きをプラスすることで、身体の曲線を生かしつつ、生き生きとしたフォルムに仕上げている。