トム ブラウン ニューヨーク(THOM BROWNE.NEW YORK)が2013年6月30日(日)、2014春夏コレクションをフランス・パリのエコール・ミリテール(陸軍士官学校)で発表した。
通常ではファッションショーで使うことのできない会場(日本で言えば自衛隊学校が近い)を使用、インスピレーションは「軍隊」。1800年代後半から第二次世界大戦までの各国の軍服のモチーフをふんだんに取り入れ、オートクチュール的なジャカード、刺繍、エンブロイダリーの技術を駆使し、国のために自らの命をかけて戦った上階級の軍人の威厳と色気を表現している。
ファーストルックは、トリコロールのダブルブレストのレザージャケットに、スカートのように見えるワイドシルエットのオーバーパンツ。パンツのサイドに付けられた無数の開閉ボタン、肩にかけられたトリコロールのロープ、赤い羽を立てた海兵帽がアクセントになっている。
お次は、極端に広い肩幅と高い位置のウエストマークからヘムにかけて広がった、Xラインのダブルブレストのコート。アンカーマークなど様々な刺繍が施された生地は、プレタポルテのクオリティを軽々と飛び越え、オートクチュール的な出来映えとなっている。
その後も、ジャケットの後ろから延びた布を股の間を通して前で止めるディティールや、バイク部隊を連想させるトラウザー、ショート丈にすることもできる海軍士官を思わせるコートなど、凝りに凝ったアイテムを披露。カラーパレットはトリコロール中心で、ボトムは全て白で統一し、アウターの色を最初はグレー、次はネイビー、その次は赤、最後は黒と変化を持たせている。
顔はファンデーション、頬にはチーク、唇に赤いルージュを塗って、目は大きめのティアドロップのミラーサングラスで隠している。ソックスには現代ではフェミニンなアイテムに用いられることが多いレースの飾りが付き。トム定番のロングウイングチップは、ヒールが10cm延びていて“ヒールウイング”になっている。このメイクと足元の“遊び"により、軍人の規律は薄まり、1970年代後半から80年代前半のデヴィッド・ボウイを彷彿とさせる妖しい色気が付加されている。
今回は、禁欲的なイメージの軍隊に、ある意味、禁断ともいえる色気をミックス。選んだ会場を含めて今回のショーは様々な物議を呼ぶかもしれない。それでも、敢えて不可侵の世界に踏み込んだトムの勇気をまずは讃えたい。また、そんなショーピースの行進を許した親会社のクロスカンパニーの懐の深さにも拍手!
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)