ディズニー・アニメーションにとって、『アナと雪の女王2』から約1年半ぶりとなる映画『ラーヤと龍の王国』は、<龍の王国>を舞台に、孤高のニューヒロイン・ラーヤの戦いと成長を描く壮大なファンタジー。
『ベイマックス』のドン・ホールと『ブラインドスポッティング』のカルロス・ロペス・エストラーダの強力タッグが指揮をとり、『モアナと伝説の海』のオスナット・シューラー、『アナと雪の女王』シリーズのピーター・デル・ヴェッコらとともに作り上げた。
ディズニーヒロインの中で、孤独に生きてきたキャラクターは他にもいるものの、家族や仲間の助けもなく、たった1人で魔物を倒すために旅を続けるラーヤは異色の存在。そのニューヒロインの活躍と成長を描くストーリーはもちろん見どころだが、本作は、何といっても“圧巻の映像美”に注目だ。無限に広がる鮮やかな大地や太陽の光に煌めく川、宙に浮く水滴など、様々な自然の景色をアニメーションとは思えないほどリアルに、そして壮大に描いている。
本記事では、『ラーヤと龍の王国』制作秘話とともに、ディズニーがさらなる進化を遂げた“圧巻の映像美”の舞台裏に迫る。
物語の舞台となるのは、龍の王国―クマンドラ。聖なる龍たちに守られ、龍と人とが共存する平和な王国だったが、突如現れた邪悪な魔物ドルーンとの戦いで、すべての龍が犠牲に。さらに残された人々は信じあう心を失い、王国は分断されてしまう。聖なる龍の力が宿るという<龍の石>の守護者一族の娘であるラーヤは、唯一生き長らえたという“最後の龍”の力を蘇らせ、再び平和を取り戻すため、 “ひとりぼっち”の救世主として一人旅立つ。
『ラーヤと龍の王国』の舞台である<龍の王国>クマンドラは、主人公のラーヤの祖国「ハート」をはじめ5つの国から成る。
「ハート」:ラーヤの祖国。島の自然豊かな地で、独特な岩層が取 り囲み<龍の石>を守り続けている。
「テイル」:孤立した砂漠の土地。集落は緩やかに繋がり、自給自足の文化を確立。
「タロン」:クマンドラの中心に位置し、貿易港として発展。市場など活気に満ちている。剣を振りまわす兵がはびこる。
「スパイン」:人里離れており、壮大な雪に覆われた山々とそびえ立つ黒い竹が特徴。 巨大な斧が屈強な戦士たちの武器となっている。
「ファング」:短気な悪党たちが守る川の上流に位置し、人工の運河によって保護された豪華で管理された土地。
本作では、これらの国をそれぞれ全く別の世界観で表現している。制作のオスナットが「5本の映画をデザインするようなものだ。」と語るように、5つの国は風土や地元民の衣装、人々にとっての意味深い言語にいたるまで細かく差別化されている。
例えば建築物1つとっても、龍や水との関わりが深い「ハート」では“しずく状”をイメージした丸みのある様相。パワーが物を言う「ファング」の国は力強く特大。建築物や地勢に多様性を持たせることで、衣装やスタイルもそれぞれ異なる住人で満ちた、全く異なる環境を作り上げた。
『ラーヤと龍の王国』は、ディズニー・アニメーション初の東南アジアにインスピレーションを受けた作品でもある。制作陣は、リアルな世界観を築くため、ラオス、インドネシア、タイ、ベトナム、カンボジア、マレーシア、シンガポール等、東南アジアにリサーチを敢行した。現地に住む人々とのコミュニケーションを経て、クマンドラの地に生命を与えた。
こうして実際に現地に足を運び、色使いやデザイン、習慣や伝統など“生の文化”を反映させた『ラーヤと龍の王国』は、映像の中で、雨の匂いや森林の湿度まで感じられるほどリアルな世界観となった。本作の中に広がる、アニメーションとは思えないほどの壮大な景色は、スタッフの並々ならぬ熱い想いとこだわりが実現したものだ。