ディオール(DIOR) ウィンター 2021-2022年 メンズ コレクションは、スコットランド出身のアーティスト、ピーター・ドイグとコラボレーション。“儀式用の服装”に宿る、贅を尽くした男性らしさを着想源に、過去と現在を繋ぐコレクションを展開する。
今季メンズ アーティスティック ディレクターのキム・ジョーンズは、ピーター・ドイグの作品をファッションへと置き換えた。それはかつて、夢を現実へと書き換えた創設者 クリスチャン・ディオールの偉業をなぞるかのような、過去と現在を繋ぐ儀式。完成したコレクションは、刺繍や装飾があしらわれたユニフォーム、とりわけフランス芸術アカデミーのコスチュームに着想を得たスタイルを、クチュールの男性的な解釈として提示する。
コレクションに溢れるのは、ドイグがメゾンとの緻密なコラボレーションの中で、自ら考案したというモチーフ。手作業による刺繍、ニット、ハンドペイントなどによって、ブラシのタッチを生き生きと表現している。
中でも印象的なのは、温かなセーターの上に現れた“ふたつの動物”のモチーフ。グリーンのセーターにはクリスチャン・ディオールの愛犬・ボビー、もうひとつのルックにはドイグの絵画のキャラクターであるライオンをオン。特にこのライオンは、かつてピエール・カルダンがムッシュ ディオールのためにデザインした“仮面舞踏会用コスチューム”を連想させるモチーフで、ムッシュが絶えず大切にしてきたアートと友情にオマージュを捧げているように感じられる。
また今季散見されたナポレオンジャケット風のアウターは、メゾンのラッキーモチーフである“星”と共鳴する特別な一着。ジュエリーやベルト、ファブリックには、ソフトでくすんだブルー、ネイビー、ダスキーモーブ、ディオール グレーといったメゾンのカラーパレットで表現。中には、目が覚めるようなブリリアントイエローで彩った、フレッシュなデザインや、ドイグの作品「MILKY WAY」から取り入れた夜空のモチーフ入りのルックも登場する。
アイコニックな「バー」ジャケットから取り入れたくるみボタン、1960年代のオートクチュールのイブニングガウン「ロゼラ」より引き継いだ金糸の刺繍など、ディオールのアーカイブを再解釈した装飾も、今季を語る上で欠かせない要素だ。これらのコレクションを彩るパイピング、バウンドトリム、バロック刺繍は、まるで衣服そのものが絵画であることを感じさせる“額縁”のような佇まい。ドイグとコラボレーションした舞台演出も相まって、それはまるでひとつの芸術作品を見ているかのようなデジタルショーとなった。