ミハラヤスヒロ 2013-14年秋冬コレクションのテーマは「チンピラ」。チンピラたちの持つ悪趣味とも取れる独特な世界観の中に潜んだ、強い美意識にインスパイアされたコレクション。威圧的ではあるがその繊細な美意識は、儚い夢を永遠に追い続ける少年の精神を彷彿とさせる。ショーでは東京打撃団の力強い太鼓の音が、それをいっそう引き立てた。
2012年秋冬コレクションでも見られた西陣織で、今回はヘビ柄を表現。セットアップからシャツ、コート、スニーカーまで随所に使用された。西陣の工場「細尾」が織り上げる生地は、上質のシルクの中に織り込んだ本物の金の糸が。光を最大限に反射し、見る角度によって表情を変えるその生地には、ヘビ柄の中に和柄の地紋柄が隠されているなど遊び心も見られる。
重厚なボアやコットンのデタッチャブルカラーがついたコートは、見た目にインパクトがありながらも、素材はアンゴラ100%を使用。軽い上に着心地なめらかで、デザイン性と着心地を両立した。特にチェスターコートは、前面はボックスシルエットでありながら背面はシェイプがかかっており、幅広い年代に受け入れられる絶妙なシルエットの逸品に仕上がった。
ショーの中でひときわ目を引いたのが、大胆な刺繍が施されたブルゾンだ。前面に鷹、背面にドクロが大きく刺繍されたこのブルゾンはリバーシブルとなっており、裏面は富士山、イカリ、龍の刺繍の上からキルティングステッチが施されるなど、ディティールにまで大きなこだわりがうかがえる。また、彫り師にオリジナルの刺青を書いてもらい、ミハラ得意のフォトジャガードでそれを映し出したセットアップは、まさに圧巻の一言だ。
シックな色合いのコレクションに鮮やかに映えるのが、花などの植物で人体図を表現したTシャツやシャツ、ニットだ。悪趣味ともとれるこれらのデザインは、見る者に大きな衝撃を与えた。オパール加工によりクロコ模様に処理された花柄シャツは、最先端のギミックとデザインが結合したミハラヤスヒロならではの一着と言えるだろう。幾度とない試行錯誤によってスビンゴールドをシャツに採用するなど、素材へのこだわりにも注目したい。
そのほか、磨き込まれたトゥキャップが革の中から現れたシューズや、直線的な編み目で幾何学的な模様を表現したローゲージニット、内側のニットの質感を表面に浮き出させたレザージャケットなど豊富なラインナップ。チンピラの持つ独特の世界観の中に、日本の伝統と最新の技術を詰め込んだモダンなコレクションとなった。