2012年10月24日(水)、ノゾミ イシグロ オートクチュール(NOZOMI ISHIGURO HAUTE COUTURE)の2013年春夏コレクションが発表された。テーマは、「裏側の東京」。服に込められたのは「あなた達は東京で一体何をやっているのか」という東京に居る全ての人達に向けた問いかけだった。
ホーメイ歌手の山川冬樹率いるバンドの生演奏と共にショーは始まった。骨にまで染み渡るような山川の歌声にのせて登場したモデル達がまとうのは、雑誌をモチーフとしたドレス。紙に似せて作った布を使い、プリントはオリジナルの中にファッション誌のコラージュを取り入れた。よく見るとハイブランドのロゴなどが隠れており、ユニーク。
布は破られ、プリーツやドレープが施されているが、中でも折り紙のように布を織り畳んだ加工に注目が集まる。日本人ならではの器用さが光り、縫う事なく美しい立体を描き出している。このように様々な加工を取り入れたドレスから浮かび上がるのは、東京の混沌とした情景だ。多種多様な人種と文化が不規則に織り混ざり、雑然としてどこか寂しさを匂わせる。
バンドが美輪明宏の「ヨイトマケの唄」を演奏し始めると、服はトーンを上げていく。白を基調とした中にシルバーやピンクなどの色を加え、素材もシアーで軽く柔らかになる。歌に現れるひたむきな労働者のように、服も一歩一歩進んでいく。まるで日本の未来に希望を見出だしたかのように。
「ダークなことは先週終わった。楽しい事を表現するのが愛なんじゃないか」デザイナーの石黒望は、今の東京という街に疑問を持ちつつも、確かな期待を抱いている。