まとふ(matohu) 2019-20年秋冬コレクションが、2019年3月22日(金)に表参道ヒルズ「スペースオー」にて発表された。テーマは「雪の恵み」。
前シーズンに続き、映像+プレゼンテーション形式でコレクションを発表したまとふ。前回と連動したプロジェクト「手のひらの旅」は、夏の青森・津軽から冬の津軽へと舞台を移す。
会場に映し出されたのは、思わずため息がでてしまうような雪国の風景。しかし雪国の人にとって、雪とは本当に厄介なものであるらしい。
デザイナーの堀畑裕之と関口真希子は、“外部”の人間であるからこそ、「近くにいると見えにくい」雪国の魅力に目を向ける。そしてその目線のまま彼らが着目したのは、この時期だからこそ生まれる伝統工芸品。外には出ることのできない“冬ごもり”の時間をたっぷりと使って完成した、伝統的な刺繍「こぎん刺」や江戸時代から続く漆塗り「津軽塗」を、今季のコレクションに使用した。
前シーズンもこぎん刺のワードローブが登場したが、今季はウールの生地にウールでこぎん刺を施すという、温もり溢れる羽織が到着。真っ青に彩られた羽織の胸元には、美しいコントラストを描く白のこぎん刺が施されている。また着心地の良さそうな、そのふんわりとした質感は、仕上げに縮絨を丁寧にかけて実現したものだ。
ブランドのアイコニックなワードローブ「長着」からは、新雪のような純白の一着が登場。よく目を凝らすと見えてくる不思議な“窪み”は、雪の上に水がポツポツと落ちた“後”の様子を表現したという。その下には、雪の結晶をモチーフにしたポップなワンピースをレイヤードしている。
ひと際会場の目を惹いたのは、総レースで仕上げた真っ白なワンピース。ワードローブを象る六角形の集合体には、異なる表情の雪の結晶があしらわれている。またレースの図形をそのまま残した裾は、手作業でカットしたというアシンメトリーなデザイン。職人ならではの温もり溢れる手仕事と、エレガントなデザインが融合した、まとふならではの一着となっている。
また日常ではあまり馴染みのない「津軽塗」は、スタイリングのアクセントとなるアクセサリーやボタンになって登場。モデルの耳元で煌めく「津軽塗」のピアスは、シャープな三角形のモチーフがアクセントとなるエッジなデザインだ。古き良きものを現代に蘇らせる、伝統とモダンをミックスさせたまとふの旅は、これからも続いていくようだ。