ディオール(Dior)の2018-19年秋冬ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク2日目の2018年2月27日(火)に発表された。
アメリカン・ヴォーグのエディターとして活躍したダイアナ・ヴリーランドの言葉がコレクションノートには記されている。1963~1971年にかけて“カリスマ”として活躍した彼女は、60年代は自由に溢れ素敵な時代であったこと、そして女性たちは自分自身を進化させていたと語っている。
当時のパリといえばデモが多発。多くの人がこれまでの当たり前な事柄から解放されることを求め、自由の獲得を目指していた。ディオールのブティックの前でもプラカードを掲げてミニスカートをはいた女性たちが行進する「ミニ スカート フォーエバー」というデモが起きたという。
ロダン美術館に隣接させたショー会場には、当時のあらゆるファッション雑誌の表紙、そして「ミニ スカート フォーエバー」の写真がパッチワークのように組み合わされ、60年代のファッション界を視覚的に表現している。
マリア・グラツィア・ キウリが提案するシーズンピースは、こういった60年代の影響を受けながらも現代の女性たちへ向けて、ファッションを自由に楽しもうという強いメッセージ性が込められているもののように映る。
序盤は、チェック柄のセットアップスタイルのオンパレード。クラシックなジャケット、プリーツスカートを同じように身に着け軍隊のようにモデルたちが行進する。規則性のある柄、統一されたコーディネート、そういった要素もデモを起こす前の保守的な世界を描いているようにも見える。
しかしながら、単調なリズムは少しずつ壊れていく。スカートのレングスが変わり、シースルー素材が取り入れられ、ボトムスがパンツに変化。サウンドがリズミカルに転調すると、音楽の高まりと連動するようにコレクションピースも多彩に変わっていく。
様々な色柄を組み合わせたキルトジャケット、数種類のプリントデニムを貼り合わせたスカート、メンズライクなバイカージャケット。どれも個性的で主張が強いピースだ。マリアらしいシースルーのロングドレスの上には、華やかなフラワーエンブロイダリーをのせ、大きなサイズのニットにはメゾンを代表する8を、Tシャツには女性の姿を描いた。
それらは、アイテム一つ一つが持つムード、例えばシースルードレスであればフェミニン、バイカージャケットであればマニッシュ、Tシャツであればカジュアル。そういったイメージを破壊するようにコーディネートされる。フリルののったドレスの下にはブランドロゴ入りブラトップを忍ばせ、ウエストは大きなDロゴのバックルベルトをセット。Tシャツにはフレアなスカートが組み合わされている。その姿は自由で開放的。60年代の女性たちが求めていた、何かにカテゴライズされずに自由に楽しむスピリットを体現しているようにみえる。