2012年3月20日、ヤストシ エズミ(Yasutoshi Ezumi)が2012-13年秋冬コレクションを発表した。自身の服作りを"理にかなった服作り"と表現する江角が今季テーマに選んだのは「Natural Selection(自然選択説)」。自然界では、あるべき機能や形が選択され、理にかなったものだけが淘汰され、そして進化を遂げてきた。
そこで着目したのは、ある面をすきまを最小限にして埋めるときに、一番有効な形が三角形、四角形、そして六角形であるという「最少面積の法則」。その中から選んだ四角形と六角形がコレクションを読み解くキーワードだ。
パターンの基本は四角形。ファーストコレクションでも長方形をテーマとしたが、四角形のパターンは服の製造工程において無駄なく効率的な服作りを可能にする形。キモノのベースでもあるこの長方形のパターンに、ボタンやドレープなど西洋の服作りの要素を取り入れて、着やすく動きやすい、機能的にも優れたドレスが出来上がった。
六角形は、「自然界では雪の結晶や蜂の巣に見られ、人間界では建築などにも応用される形」(江角)。ドレスを彩るボレロやストールは、六角形の土台の上に取り外し可能な雪の結晶のパーツがパズルのように組み合わさり、雪が降り積もったイメージをそのままデザインに落とし込まれている。オリジナルのジャカード生地も、六角形の中にデザイナー自身が描いた草花が織り込まれている。
ショーの2日後、インスタレーション形式での発表も行った。シルクやカシミアなど素材にもこだわった服を、間近で見て触ってその良さを実感してほしいという、本当の服の価値を追求する江角のメッセージが込められたプレゼンテーションの方法だ。