1970年、高田賢三は19世紀の美しい風情を残したGalarie Vivienneの一角に、革新的なブティック「Jungle Jap」をオープン。そこは、パリのファッションにとって、最もエキサイティング且つエネルギーに溢れた場所の一つとなった。そんなブランドの出発点とも言えるVivienne通りで披露されたKENZO(ケンゾー)の2012年春夏コレクションは、今シーズンよりオープニングセレモニーの創設者Humberto Leon(ウンベルト・レオン)とCarol Lim(キャロル・リム)がクリエイティブディレクターを務めている。ふたりは、新たなKENZOの旅を始める第一歩として、まず、かつて高田賢三も感じていたであろう、パリに行く時の高揚感に似た感覚にリンクすることからスタートしたという。
コレクションのポイントは、大胆な色使い、機能性とリバーシビリティ、遊び感のある柄のファブリック、そして、緩やかさと若々しい上品さ。1950年代に軍隊から退き、パリで活躍したアメリカ人画家エルズワース・ケリー(Ellsworth Kelly)が作り出す原色使いからインスパイアされ、フランスとアメリカの両方のクリエイティビティが融合し作り出された、胸躍るような色の世界を表現している。そこに、ロサンゼルス出身のウンベルトとキャロルが愛するアメリカンスタイルと気楽なパリのスピリットがぶつかった不調和感が重なり合い、新しい感覚が生まれた。
新生ケンゾーの船出を彩るのは、貝殻・鳥・漁師のネットが映し出された海岸沿いの風景を起こさせるプリント柄や刺繍、アクセサリー達。初夏の海辺のように、キラキラと輝く太陽と爽やかな海風が新歴史のスタートを祝福しているようだ。