サポートサーフェス(support surface)の2024-25年秋冬ウィメンズコレクションが、2024年3月15日(金)に渋谷ヒカリエにて発表された。
デザイナー・研壁宣男は、コレクション製作にあたって事前にテーマを掲げない。作業を終えた後に自然とそれは浮かび上がってくるのだそうだ。今季のキーワードは「KAWAII!?-Adorable」。しかし、端正なシルエットを得意とするサポートサーフェスはこれまで、「かわいい」ではなく、「綺麗」や「かっこいい」といった形容詞が似合うスタイルを提案してきたように思われる。
現に研壁は「かわいい」という言葉が苦手であると明言していたが、今季のルックは、首周りに寄せたギャザーやドレープを効かせたアイテムなど、全体を通してフェミニンな印象だ。研壁は今季の製作を振り返り、はじめて、自身が苦手な「かわいい」に向かって挑戦していたことに気づかされたという。
シルエットは一貫して優雅な表情を見せている。前述したギャザー使いはファーストルックで登場したシャツのほか、ワンピースのウエストラインでも見られた。また袖周りにたっぷりと生地感をもたせたパフスリーブのトップスやワンピースも多く登場。フリルやドレープをともなったスタイルが続き、女性らしい雰囲気を纏っていた。
ボディを包み込むような優しいシルエットは、ボトムスにも落とし込まれている。たとえばスラックスは、ゆとりのあるサイズ感で、どんな体型でも馴染むようなデザインに。バルーンスカートは、ウエストバンドの下部にテキスタイルを大きく寄せた、樽型のようなフォルムが目を惹いた。新しい形でボリュームを持たせ、気品のあるラインを作り出している。
洗練された無地のファブリックが続くなか、中盤ではフラワーモチーフがお目見え。ブラックの花柄は、ワンピースとスカートに落とし込まれた。ナイロンチュールにフロッキープリントを重ねるなど、細かい工程を踏んだ素材で、ふんわりとした質感ながら時折パリッとした表情を見せる。
このように今季のサポートサーフェスが提示する「かわいい」は、単なるかわいいとは一味違う。ギャザーやフリルは確かにフェミニンな要素を与えているが、身体を包み込む優雅なスタイルに押し上げる要素となっている。また、愛らしい花柄も、ブラックのワントーンで統一し、シックな存在感を放つモチーフへと昇華させていた。
研壁は、素材感、着心地をいちばんに追求してクリエーションを行っていると語る。また秋冬シーズンに欠かせないアウター類は、“極寒の冬”という短い期間だけに限らず、秋冬の季節を通してできるだけ長い間着れるようにと、ノースリーブのウールコートやジャケットも揃えている。「それは着用する人の満足度のために」という一文で締めくくられたインビテーションのように、研壁の服作りに対する想いを感じさせる。