ラッド ミュージシャン(LAD MUSICIAN)の、2023-24年秋冬コレクションを紹介。
今季の着想源となったのは、アメリカ・ケンタッキー州ルイビルで結成されたバンド「スリント(SLINT)」。変則的なリズムを特徴とするマスロックを主に手掛け、後のポストロックの原型を生み出したともいわれる「スリント」の楽曲を通して、当時10代だった彼らが抱いていた“大人になることへの不安と解放”をデザインに落とし込んだ。少年期の揺らぎやナイーブさを、細やかに投影している。尚、テーマとなっている「スリント」とのコラボレーションアイテムも展開される。
スリントに加え、ドラムなどを製造・販売する楽器メーカー「パール(Pearl)」とのコラボレーションアイテムも登場する。チェックシャツの中に着たロゴTシャツ、ボアブルゾンの合わせからのぞくドラムプリントのカットソー、リラクシングなトープカラーのスウェットなど、ラフに着こなしたウェアを象徴的なロゴやモチーフが彩る。加えて、「パール」のロゴTシャツを着た「スリント」のドラマーを写したプリントスウェットも用意。瞬間的に音楽を彷彿とさせるウェアが揃う。
陰影で表現されたバラの単色プリントを施したダブルのテーラードジャケットやパンツ、バラと蜘蛛を描いた総柄ニット、儚げに揺れるカーネーションのセットアップ、ブラウスといった花のグラフィックもまた、刹那的な繊細さを思わせる。カーネーションモチーフは、背景と花の鮮やかな色彩がコントラストを描くブラックと、風化して褪せたような色味のカーキ、ひんやりとした冷たさを持つブルートーンで表現されている。
程よく身体に添うように仕立てられたシルエットも印象的だ。テーラードジャケットはフロントのVゾーンを狭く設定しウエストにかけてさりげなくシェイプを効かせることで、鋭利な佇まいに。上品な光沢を備えたチェスターコートは、ドレープが浮かぶ程度のゆとりを持たせつつ、流れるような造形で端正な装いを演出する。また、ライダースジャケットは、ディテールをミニマルにそぎ落としテーラード仕立てにすることで、モードにも着こなすことのできる振り幅を持たせた。
加えて、スタンドカラーブルゾンや、トレンチコート、モッズコート、ニットなど、ゆとりを持たせて仕上げたアイテムも、近年のラッド ミュージシャンのオーバーシルエットと比較すると抑えたサイズ感となっている。ラップスカート風のアシンメトリーワイドパンツは、ボンデージのベルトディテールを加えることでストレートなフォルムに仕上げた。ブラウンのダブルブレストジャケットに合わせたワイドパンツは、段々と波打つようにドレープを刻みながら裾に向かって落ちていくユニークなシルエットが目を引く。