展覧会「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」が、京都国立近代美術館にて、2023年2月11日(土・祝)から4月9日(日)まで開催される。その後、7月1日(土)から8月27日(日)まで、東京ステーションギャラリーに巡回する。
大正期から昭和期にかけて、日本画、そして映画の領域で活動を展開した甲斐荘楠音(かいのしょう ただおと)。大正期から昭和初期には日本画家として活躍した甲斐荘は、理想美を描きだすのではなく、美しさと醜さが入り混じる人間の生々しさを巧みに描写し、戦前の日本画壇で高い評価を得た。その後、1940年代初頭に画業を中断すると、映画業界に転身、時代劇の風俗考証などを手がけるようになった。
甲斐荘の没後20年を経た1997年には、その回顧展が開催され、日本画家としての活動の全貌が初めて紹介された。美術館での2度目の回顧展となる本展「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」では、日本画家という枠組みで捉えきれない甲斐荘の「越境性」に着目。絵画、写真、映像、映画衣装、ポスター、そしてスクラップブックや写生帖などを等しく展示し、複雑で多面的な個性を持つ表現者としての甲斐荘の像に迫る。
甲斐荘には「京都画壇の異才」という評価が確立しているものの、その影には多様な側面が隠されている。甲斐荘は、幼少期より歌舞伎などの観劇を愛好し、自ら女形として舞台にも立った趣味人であり、また、古今の服飾にまつわる見識を活かし、溝口健二といった映画監督を支える風俗考証家でもあった。さらに、女形としての演技や異性装による「女性」としての振る舞い、そしてセクシュアルマイノリティでもあったという嗜好は、彼の表現活動をひもとくうえで欠くことができない。本展では、甲斐荘の多彩な顔に光をあてつつ、その創作の全貌を紹介する。
日本画家として活躍した甲斐荘は、革新的な日本画表現を展開した美術団体「国画創作協会」の会員としても知られた。本展では、《幻覚(踊る女)》や《秋心》、《横櫛》など、甲斐荘の代表的な日本画作品を展示し、その画業を紹介。甲斐荘が何をどのように描き、そしてどのような画家として捉えられてきたのかを再考する。
甲斐荘が幼少より育んできた芝居への愛着や執念は、絵画制作にも反映されている。甲斐荘が描いた「美人」は、いわば美人を演ずる彼自身でもあったといえる。会場では、日本画やスケッチ、写真資料から、扮すること、そして演じることに対する甲斐荘の思いを探ってゆく。
芝居への愛から、人間の形の美を超えた生命の美を捉えようと試みた甲斐荘は、映画の世界へと転身し、時代劇の風俗考証に携わるようになった。本展では、『旗本退屈男 謎の暗殺隊』や『旗本退屈男 謎の南蛮太鼓』といった映画で市川右太衛門が身にまとった衣裳などから、映画人としての甲斐荘の活動を紹介する。
展覧会「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」
会期:2023年2月11日(土・祝)〜4月9日(日)
会場:京都国立近代美術館
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町
開館時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで開館)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日
観覧料:一般 1,800円(1,600円)、大学生 1,100円(900円)、高校生 600円(400円)
※( )内は前売りおよび20名以上の団体
※中学生以下、心身障がい者および付添者1名、母子家庭・父子家庭の世帯員は無料(入館時に証明できるものを提示)
※本料金でコレクション展も観覧可
※前売券は1月10日(火)から2月10日(金)まで販売
■巡回情報
・東京ステーションギャラリー
会期:2023年7月1日(土)〜8月27日(日)
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
【問い合わせ先】
京都国立近代美術館
TEL:075-761-4111 (代表)