東京都写真美術館では、展覧会「TOPコレクション メメント・モリと写真 死は何を照らし出すのか」を、2022年9月25日(日)まで開催する。
「メメント・モリ」とは、ラテン語で「死を想え」を意味し、キリスト教世界では人びとの日常がつねに死と隣り合わせであることを示す警句であった。この言葉は、ペストが流行した中世ヨーロッパにおいて、骸骨と人間が踊る様子を描いた「死の舞踏」と呼ばれるイメージと結びつき、絵画や音楽といった芸術作品の題材として広く浸透することとなった。そこには、伝染病、戦争、飢餓といった困難の多い時代にあって、人びとは自身がいずれ死すべき定めにあることを自覚し、生きることに積極的な意味を見出そうとした様子をうかがうことができる。
一方、写真が死を想起させるメディアであることは、たとえばロラン・バルトなどに見るように、たびたび指摘されている。展覧会「TOPコレクション メメント・モリと写真 死は何を照らし出すのか」では、東京都写真美術館の豊富な収蔵作品のなかから、「メメント・モリ」をテーマに約150点の作品を紹介する。
一瞬を切り取り、感光剤によってイメージを定着させる写真術は、人間が脆く、移ろいやすい時間のうちにあることを示唆するものだといえる。本展では、時間や記憶、あるいは人間の思いを1枚のイメージのうちに定着させるという写真の特質にも着目しつつ、写真表現を通して積極的に「生」と向き合うことへと光をあてる。
会場では、メメント・モリと写真の密接な関係性に焦点を合わせて、17人の写真作品を紹介。フォト・ジャーナリズムを代表するW.ユージン・スミスやロバート・キャパ、澤田教一、近代化により姿を変えつつあるパリの街並みを捉えたウジェーヌ・アジェ、ホスピスで暮らす人びとの暮らしを撮影したマリオ・ジャコメッリなど、国内外の作家による作品からメメント・モリを多角的に再考する。
また、序章では、「死」のイメージとしてよく知られている版画作品、ハンス・ホルバイン(子)の『死の像』を展示。「死の舞踏」の優れた図像表現であるこの木版画連作を通して、メメント・モリの起源や、中世において流行した背景を紹介する。
美術館1階のカフェ「フロムトップ」では、9月25日(日)まで、「メメント・モリと写真」展とのコラボレーションメニューを展開。黒ごまを使用して、モノクローム写真を思わせるブラックに仕上げたカレー「メメント・モリ 黒いカレー」と、ハンス・ホルバイン(子)の『死の像』《原罪》を着想源に、“禁断の果実”をモチーフとしたりんごのコンポート、生命の源泉である「水」のゼリーに、桃のスープを添えた「メメント・モリ デザートプレート」を用意する。
展覧会「TOPコレクション メメント・モリと写真 死は何を照らし出すのか」
会期:2022年6月17日(金)〜9月25日(日)
会場:東京都写真美術館 2階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00〜18:00 (木・金曜日は20:00まで)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(月曜が祝休日の場合は開館、翌平日休館)
観覧料:一般 700円、学生 560円、中高生・65歳以上 350円
※オンラインによる事前予約が可能
※小学生以下、都内在住・在学の中学生、障害者手帳の所持者とその介護者(2名まで)、年間パスポート提示者は無料
■出品予定作家
ハンス・ホルバイン(子)、マリオ・ジャコメッリ、ロバート・キャパ、澤田教一、セバスチャン・サルガド、ウォーカー・エヴァンズ、W. ユージン・スミス、リー・フリードランダー、ロバート・フランク、牛腸茂雄、ウィリアム・エグルストン、ダイアン・アーバス、荒木経惟、ウジェーヌ・アジェ、ヨゼフ・スデック、藤原新也、小島一郎、東松照明
■「メメント・モリと写真」展 コラボレーションメニュー
販売期間:2022年8月2日(火)〜9月25日(日)
場所:東京都写真美術館 1階 ミュージアムカフェ「フロムトップ」
休店日:月曜日 ほか
営業時間:10:00〜18:00(木・金曜日は20:00まで)
※営業日、営業時間は美術館に準ずる
TEL:070-8591-3730
メニュー:
・「メメント・モリ 黒いカレー」黒ごまのカレー(サラダ、ドリンク付き) 1,500円
・「メメント・モリ デザートプレート」りんごのコンポート、水ゼリー、桃のスープ 1,200円
【問い合わせ先】
東京都写真美術館
TEL:03-3280-0099