NYのメンズファッションは変化してきていますね。3~5年前は、すごく気軽でカジュアルな感じ。例えばシャツとかスーツとかプレッピーで、いわゆる「アメリカン」というイメージでした。でも今は、私たちを含むデザイナーたちが少しずつリスクを負っていろいろな挑戦をしている。これまでにないユニークな要素が加わっているというか。「リスク」といったら大げさですが、様々なデザインや色がすでに生み出されているので、デザイナーたちは、誰も見たことないものを作るチャレンジしていると思います。
どちらかというと、ロンドンやNYと似ているのかな。たくさんのブランド、洋服があると思いますし、インターネットやSNSの影響もあって様々なスタイルが交差している気がします。でも、やっぱりアジアのマーケットは、アメリカともヨーロッパとも違うし、独特のプレッピーな雰囲気がありますね。ヨーロッパは伝統に対する厳格さみたいなものがあるし、アメリカはかなりカジュアル。でも日本はアメリカのテーラードスタイルとリンクしている気もします。
あとは雑誌で見た10年前の東京・原宿の様子は「extreme (極端、先端の意)」って感じがしましたけども 笑
ゴシックとか、好きな音楽とかに本当に没頭しているスタイル。もしパンクが好きそうな人だったら、やっぱりファッションもすごくパンクだし。そういうところが「extreme」でした。実際に来てみて、クレイジーな恰好の人はあまり見かけなかったんですがね…笑
いずれにしても、日本のスタイルはとても興味深いので、アディダスで働いていたとき、チームの誰もが東京に行きたがっていましたよ。
写真では伝わらない”ディティール”をぜひ見てほしいです。服の内側とかも全部。一着の服ですが、シルエットとか、コレクションの雰囲気とか全部を知ってもらいたい。ジャカードやスウェットを使ったシンプルなアイテムもありますし、ユニークなものも、ジーンズに合わせたり気軽に着こなせるものなので。アイテムひとつひとつがブランドの雰囲気を物語ってくれるはずです。
インタビューを終えると、ティムは「昨日面白いものを見つけたんだ」と言って携帯を差出し、一枚の画像を見せてくれた。それは何気ない日本の工事中の風景だった。「建物を覆うブルーのビニールシートと、イエローのクレーンと、前に立ってる男の人…これがすごくいいと思うんだ!」と話す。これはよくある光景であると伝えると、「そうなんですか?NYの工事はもっとたくさんの人がいたり、音がうるさかったり雑然としたイメージだから。でもこれは…とても穏やかな方法でビルを破壊していますね」とって笑う。なんとも絶妙なシーンに感銘を受けるティムに、最後は思わず笑わせられてしまった。仕事の話となると、真剣な眼差しで話す一方、インタビュー後のリラックスした姿は、気さくな人柄がにじみ出ていた。真剣にビジネスに向き合いながらも、こだわりのあるクリエーションを続ける、一人のデザイナー。今後のさらなる躍進に期待したい。
Interview and Text by Kanae Kawasaki